FIRE達成後に「病んでしまう人」を
縛っている思い込みとは?

 一方で、FIRE達成前から勉強を兼ねてFIRE達成者の交流会に参加し、退職後を見据えて人間関係を築いたり、趣味を見つけたりしていた人もいます。また、そうしたスタートダッシュができなかった場合でも、特に落ち込むことなく、次のようにポジティブに捉える人もいます。

「会社を辞めてから、重い仕事の話をすることが減って最高!」
「嫌な仕事からは解放されて、自由な時間がこんなにあるなんて幸せ!」    
「今まで趣味を持てなかったけど、これからはやったことがないことをしよう!」

 こうした捉え方の差が、FIRE達成後に幸せを実感できるか否かに直結します。どうせなら、全ての状況を前向きに捉えた方が楽しく生きられるもの。同じ状況でも、「さあ、これから何をしようか」とワクワクできる人と、ネガティブ思考に陥ってしまう人とでは、人生の幸福度がまったく違ってくるのは言うまでもありません。

 あくまで僕の考えですが、ネガティブに考えてしまう人の多くは、FIRE達成後も会社員時代の「常識」や「思い込み」から完全に抜け出せていないのではないでしょうか。中でも、次のような思い込みに強く縛られているように思います。

「会社に所属した方が、生きていきやすい」

 会社員として働く人は、時間や場所に縛られる代わりに、「安定した給料」「社会的な役割」「自動的に与えられる人間関係」という、安心して生きるための「3つの要素」を手にしています。

 そのため一部のFIRE達成者は、会社員時代が長ければ長いほど、これらの安心材料を失ったことへの恐怖や心理的不安が強くなり、「自分は自由を享受しきれなかった」「組織に縛られていた方が楽だった」と後悔してしまうのです。