こうした綱渡りのような生活を経て、ナオミさんは約1年後にパートで再就職。手取りは月13万円ほどになりました。しかし、この収入では自分が負担している支出をまかなうには足りません。赤字分は引き続き貯蓄や退職金から補填する生活が続き、私のところに相談に来られた時点で、貯金はすでに使い切り、退職金も残り400万円ほどまで減っていました。

「仕方がないよね」で済ませる夫

 ナオミさんは、その間も何度となく夫に相談してきたそうです。

「支払いを少し手伝ってほしい」

「難しいなら、支出を減らしたい」

 しかし、ユウジさんはどれも真剣には取り合ってくれませんでした。

 そこで、ナオミさんは夫を連れて相談に来られました。せめて今の家計状況を知ってほしい。それがナオミさんの切実な願いでした。

 ところが、家計が赤字であること、ナオミさんの資産が大きく減っている現実を目の当たりにしても、ユウジさんの反応は「仕方がないよね」「改善できるように働かなくちゃ」と、どこか他人事。危機感がほとんど感じられないのです。

 実は、夫婦別財布の家計では、収入状況が変わっても、その仕組み自体をなかなか変えられないケースが少なくありません。ナオミさんの場合は病気でしたが、出産や介護といったやむを得ない事情があっても、「今まで通り」を崩せない夫は珍しくないのです。

 客観的に見れば、これは明らかに「家族の問題」です。しかし価値観の問題でもあるため、当事者同士では話が進まないことも多いのが現実です。

「夫を変えるのではなく、自分ができることをやる」妻の決意

 私が資産の目減りや赤字の深刻さを説明しても、ユウジさんにはなかなか響かず、ナオミさんも次第に呆れた表情に。妻の体調への配慮よりも、「自分だけ損をしている」という気持ちが勝っているようにも見えました。正直なところ、精神的にまだ成熟しきれておらず、期待しすぎるのは難しいタイプだと感じました。