筆者のオフィスに連絡を取り、カウンセリングを受けることにした佐藤さん。そこで出会った公認心理師は、彼女の苦悩を丁寧に受け止めてくれました。
「初めて本音で話せました。『母を施設に入れることは親不孝なのではないか』『もっと頑張るべきではないか』という気持ちを打ち明けると、『あなたはすでに精一杯やってこられました。これ以上続ければ共倒れになりかねません。あなたがお母さんの立場になった時に、自分のお子さんに介護に携わってほしいか……。おそらく答えはノーだと思います。お母さんもお元気だった頃は、同じだったはずですよ。それに、結局は施設のほうが安心・安全・快適です。あなただけでなく、お母さんにとっても望ましい選択だと思います』と言ってくれました」
公認心理師からは、具体的な解決策として次のようなプランが提案されました。
・まずは精神科病棟への入院で、母親の周辺症状を安定させる
・病院からの紹介で、適切な療養先施設を確保する
・並行して母親の財産管理と財産承継の段取りをつける
「驚いたのは『このプロセスを実行するのに、介護休業制度の利用は前提とはならない』と言われたことです。必要な情報さえ提供すれば、専門家が実務を代行してくれる。私は仕事を休まず、必要な時だけ対応すればいいというのです」
佐藤さんは「老親問題さいごまで丸ごと安心パスポート」(参考記事)を契約し、母親の今後をプロに託すことにしました。
親の介護問題からの「解放」
カウンセリングから3週間後、和子さんは精神科の認知症病棟に入院。モノ盗られ妄想などの周辺症状は薬物療法で徐々に安定し、2カ月後には病院から紹介された介護施設への入所の目処が立ちました。
「母は病院で規則正しい生活を送るうちに落ち着きを取り戻し、私も仕事に集中できるようになりました。以前のような罪悪感もなくなりました。プロの力を借りることで、母も私も救われたのです」
今、佐藤さんは会社の介護離職対策の見直しに着手しています。
「厚労省の掲げる『仕事と介護の両立支援』も大切ですが、それだけでは不十分です。親の介護問題から社員を『解放』するという視点が欠けていると気づきました。そのためには、介護の専門家、医療機関、法律の専門家など、多方面からのサポートが必要です」







