仕事と介護の両立には限界がある
ちょうどその頃、佐藤さんの会社では人事部内にダイバーシティ推進室が発足し、介護休業制度の運用が本格化していました。彼女自身も、仕事と介護の両立支援を推進する立場にありました。
「制度づくりや相談窓口の設置など、表向きは熱心に取り組んでいました。でも心の中では『本当にこれで解決するのだろうか』という疑問がありました。介護休業を取得しても、その間に母の認知症が治るわけではない。復職しても問題は残ったまま。果たして『両立』など可能なのだろうかと」
佐藤さんは、自分の悩みを隠しながら、社員からの介護相談に応じる日々を過ごしていたのです。
ある日、モノ盗られ妄想がさらに悪化した母が、近所の交番に通報する事態に発展。このままでは母親の安全も自分の仕事も守れないと悟った佐藤さんは、会社と契約していた大手居宅介護事業者のケアマネジャーに相談することにしました。
「同僚の親の相談という体(てい)で時間をとってもらいました。ケアマネジャーからは、デイサービスやヘルパー派遣の組み合わせ方、認知症の方とのコミュニケーション方法、介護休業制度を活用した働き方の提案などがなされました。でも、それらはすべて『仕事』と『介護』の時間的・労力的配分をやりくりする対症療法にすぎず、根本的な解決にはつながらないと感じました。
その方法で乗り切れる人もいるでしょう。でも私には無理だと思いました。介護と仕事、どちらも中途半端になって、最終的には両方失うことになる。それが見えていました」
転機となった「遮断」という発想
行き詰まりを感じていた佐藤さんは、あるとき介護系ポータルサイトで「真の介護離職対策とは、親の介護問題を遮断すること」という記事を目にします。
「その記事には『介護離職を防ぐ最善の方法は、親の介護と自分の生活を切り離すこと。つまり在宅での家族介護から、施設介護へのシフトこそが本質的な解決策である』と書かれていました。目から鱗が落ちる思いでした」







