無料アプリで完成した曲のクオリティーは?
画像生成AIのように進化していくか 

 すると1分くらいで数曲完成する。歌詞も勝手に何かそれっぽいものが付けられている(歌詞が入力できるアプリもある)。完成した曲のクオリティーはというと、これはアプリによるとしかいえない。もっともクオリティーが高いアプリでは、アレンジは自然で普通においしいメロディーラインなんかもあり驚嘆した。

 ただ多くのアプリではbpmなどの間違いようがなさそうな指示が反映されなかったり、コード進行がぐしゃぐしゃで展開が突拍子もなく、メロディーもメロディーというよりかうめき声といった方が近いと思えるようなものがあったりで、全体として悪夢のような、聴いていて精神が不安定にさせられるものが大半であった(無料版ゆえの限界であろうか)。

 とはいえ不安定にさせるエネルギーはものすごく、普通に生きているだけではなかなか聴けるものではないのでその意味ではとても面白かった。

 数年前に画像生成AIが出始めた頃、妙に下手というか、変な画像をよく目にしていたが、あれに近いものが今の音楽生成AIにはあるかもしれない。画像生成AIはアプリの進化や未熟なアプリの淘汰が行われて、現在は以前より「変な画像」を目にする機会が減ったように感じるが、その進歩を音楽生成AIはおそらくまだ迎えていないのではあるまいか。

 とにかく、音楽生成AIはちょっと遊ぶくらいなら、アプリによってはものすごくちゃんとしたクオリティーの曲が出力されるので楽しいはずである。

 しかし有益に感じたのは、音楽生成AIを補助的に使った場合である。アイディアに煮詰まっている時、何かピンと来るヒントがほしい。その素材探しに音楽生成AIはうってつけである。

 音楽生成AIで曲を最初から最後まで作り込むのは、AI職人として別の技術が必要だが、音楽畑の人は素材だけ拾えればあとはそれを自分流に調理して完成させればいいだけである。プロならば十中八九「自分流の調理法」を持っているはずで、やはり苦戦することが多いのは素材探しである。