「電子っぽい加工」の声になじみがある日本人は
AI曲も受け入れやすい?

 またこれは最近以前の話だが、ケロケロボイスや、ピッチ修正によって生じた電子感をあえて使うボーカル処理(Perfumeなど)も音楽的アプローチとして確立されている。

 さらに加えて、完璧な歌唱が追求されるK-POPではピッチなどがかなり作りこまれるそうで、音程を外しているボーカルの曲を見つけるのが難しいのが現状である。

 そんな具合で巷で流れる曲はだいたい声の電子っぽさや加工が強く、ボカロの声もわりと電子的だ。AIのボーカルも肉声っぽくはあるのだがやはり加工は強めなので、どれも「電子感・加工強め」ということで耳なじみが良い。AI曲を比較的受け入れやすい音楽的感性が日本人には備わっているのではないか、というのが所見である。

 ただ、あとは著作物やAI生成コンテンツに対する意識がどう出るかであろうか。音楽的に耳になじむのとそれを認めて受け入れる・応援するのは別の問題なので、AI曲がもっと日本音楽シーンに食い込んでくれば「AI曲はいかがなものか」と議論が始まるはずである。

 さて、筆者も作曲・編曲を仕事にできる程度の、いろはの「い」くらいの知見はあるので、その目線で音楽生成AIを触ってみた。

 実は最近AIと知った上で聞いた曲がめちゃくちゃかっこよかったり、知り合いの、私などとは違って最前線でやってる作編曲家がAIの手を借りているという話を聞いていたので、AIで作ったものを商売にするか否かは別にして、AIで制作する音楽についてはその過程や成果物に興味があった。そこでいくつか無料でできるものを触ってみた。

 曲の生成は本当に極めて簡単で、適当に「ゆったり、おしゃれ、雨の雰囲気」とか、イメージする単語(プロンプト)を羅列するだけである。もっと作りこみたい場合はテンポ(bpm)やコード進行、イントロが8小節とかそういう指示を書き込んでいく。アプリによっては相当細かく作りこんでいくことができる。