実際、服役していたAさんに弁護団は面会を何度も重ね、その中で精神鑑定を行いました。その結果、Aさんの知能が「9~12歳程度」で軽度知的障害(編集部注/IQが50~69の人を指し、簡単な社会生活の決まりに従って行動することが可能)があることが分かったのです。

 Aさんの障害はずっと気づかれないままでした。私がもっとも問題だと感じたのは、小・中学校でAさんに知的障害があったということが、全く気づかれてこなかったという事実です。

 報道によると、Aさんの中学校の先生は、Aさんの知的障害に気づいてあげられなかったことを後悔されていたそうですが、小学校では担任の先生は毎日のようにAさんと顔を合わせますし、中学校では定期テストや実力テストで学力がより明確になります。

 それでも学校関係者は、Aさんに軽度知的障害があったことをなかなか気づけず、特別な配慮をすることができなかったのです。軽度知的障害でも気づかれないのに、学校で境界知能(編集部注/IQ70~84の人を指す)の子が気づかれて何らかの支援を受けることはかなり困難と考えられます。

100万人以上の知的障害者が
見逃されている可能性も

 知的障害者は、知的障害という診断がつけば当然支援を受けることができます。しかし現状は、内閣府の障害者白書(令和6年度)によりますと、知的障害者は109.4万人と、人口の約0.9%です(2024年で人口は1億2378万人、人口1000人当たりの知的障害者は9人)。一方、知的障害は理論的には約2%(約250万人)いるとされていますので半数以上が認定されていないのです。

 ところで平成25年の障害者白書では54.7万人でした。つまり約10年で倍に増加していることになるのですが、この理由として同白書には、“以前に比べ、知的障害に対する認知度が高くなり、療育手帳取得者の増加が要因の1つと考えられる”と記載されています。

 つまり依然、気づかれていない知的障害者が100万人以上は存在する可能性があり、学校や社会の中でうまく順応できていて気づかれていないのか、逆に困っていても気づかれていないのかは不明です。その大半は知的障害の85%近くを占める軽度知的障害者と推定されます。