知的障害と平均域のボーダーである知能指数(IQ)「70以上85未満」は「境界知能」と言われ、日本人の約7人に1人が該当する。こうしたグレーゾーンの子どもたちは、周囲からはほとんど気づかれないため、適切な支援が受けられず見過ごされがちだ。ここでは「すぐに諦めてしまう子」「行動が遅い子」「忘れ物が多い子」の3例を挙げ、これらの対応策を解説する。本稿は、宮口幸治『イラスト図解 境界知能&グレーゾーンの子どもの育て方』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
CASE1「すぐに諦めてしまう子」
話をする分には普通だが……
ドリルや問題集を渡しても「自分には無理」と投げ出したり、新しい遊びや本などを勧めても関心を示さなかったり……。そんな様子を見ると、「なんでうちの子はすぐに諦めてしまうんだろう?」と心配になる保護者は多いはず。
しかし、諦めが早いように見える子の背景には、境界知能やグレーゾーンが隠れている可能性があります。境界知能やグレーゾーンの子どもたちは、話をしたり遊んだりする分には、ほとんど普通の子と見分けはつきません。むしろ好きなことに関する記憶力が高いこともあります。親が熱心に教えたり学習塾に通わせたりすることで、小学校の成績はそれほど悪くなく経過し、判明しづらいケースも多いです。
この子たちは言われたことは大体できるものの、いつもと違うことや予想もしない問題が起こったりすると、うまく対処することが苦手だったりします。授業を聞いて理解できなくても、「わからない」と言うのが恥ずかしくて、最初から投げ出してしまうことも少なくありません。
つまり、最初から諦めが早いというよりは、できないことから自分を守るために、取りかかる前から「自分には無理」「やりたくない」と消極的な言葉を口にしてしまっている可能性があるのです。