選ばれるクスリ#4Photo:©Eggy Sayo/gagettyimages

社会生活や対人関係の構築に困難を抱える「発達障害」。その中の一つであるADHD(注意欠如多動性障害)は薬で症状が改善する見込みが大きい。ADHD治療薬で医師の評価が高く、処方の際に選ばれている薬とは何か。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#4では、ADHDの処方患者数ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

ここ10年で使える薬が増えた
ADHD薬として4剤登場

 生まれつきの脳の特性で、子どもの頃から行動や情緒面に偏りがある状態を総称して「発達障害」と呼ぶ。発達障害といえばアスペルガー症候群のイメージが強いが、実は有病率はADHD(注意欠如多動性障害)の方が高く、小児の5~10%に見られる。アスペルガー症候群を含むASD(自閉症スペクトラム障害)は多く見積もって1%だ。

 ADHDとASDには共通点も多いが、最大の違いは薬物治療が奏功するか否かだ。中核症状を抑える薬がないASDに対し、ADHDは薬の服用により社会生活を送る上で抱える困難が改善するケースが多い。

 近年の発達障害に対する注目度の高さに伴い、ADHDの薬物療法事情は大きく発展している。2007年までは「リタリン」(一般名:メチルフェニデート塩酸塩)を適応外処方(すでに国内で承認されている薬剤を承認内容の範囲外で使用すること)するのみだったが、同年には日本初のADHD治療薬として、メチルフェニデートの徐放性製剤(薬の成分がゆっくり溶け出すようにした製剤)である「コンサータ」が登場した。

 その後、09年に「ストラテラ」(一般名:アトモキセチン塩酸塩)、17年に「インチュニブ」(一般名:グアンファシン塩酸塩)、19年に「ビバンセ」(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)と3剤が加わった。中枢神経刺激薬に属するコンサータとビバンセの2剤は覚醒効果が強く、乱用を防ぐため流通規制が敷かれており、登録医しか処方できない。

 ではコンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセの4剤のうち、最も選ばれているのはどれか。次ページでは、処方患者数ランキングを公開する。