世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

銀座の名店クオリティなのに半額以下! 「東京では考えられない」富山寿司の衝撃写真:「世界の富裕層は日本で何を食べているのか?」(ダイヤモンド社刊より) 著者・柏原光太郎氏撮影 成希の白えびの握り

「寿司といえば、富山」プロジェクトとは?

「寿司といえばどの県?」と聞かれた場合、あなたならなんと答えますか? 魚介が豊富な北海道や、情緒あふれる金沢がある石川県などを思い浮かべた方もいるかもしれません。

 この「寿司といえば」で想起される場所を、2033年までに90%の人が「富山県」と答えるようにしようと富山県が取り組んでいるのが、「寿司といえば、富山」プロジェクトです。

 たしかに、富山県の寿司のポテンシャルは極めて高いです。富山湾でとれる新鮮な魚、立山の清らかな水、それを使った美味しい米があるのですから、これで寿司が美味しくならないはずがありません。

材料に恵まれると努力を怠るのは人の性(さが)だが…

 ところが悲しいもので、材料に恵まれていると努力を怠るのが、人の性(さが)です。そのため、これまでの富山の寿司というのは、極端にいうと、富山県の米を使った酢飯に、切ったばかりの富山湾の生魚を載っけるだけという印象でした(もちろん、技術を磨くことに精を出してきた職人さんもいますが)。

 けれども、それはそれで、良い面もありました。
 良い材料が近隣でたくさん手に入るため、料金が格安なのです。たらふく刺し身を食べ、富山の地酒も飲んで最後に寿司をつまんで、お会計をお願いすると6000円程度の感じです。

 しかし、東京や大阪の人間が、「じゃあ、わざわざそういう寿司を食べるために、往復で3万円ほどかけて富山まで行くか?」と聞かれたらNOでしょう。

 しかも、地方の寿司屋あるあるなのが、県外者は富山湾の地物の寿司を食べたいのに、地元にしてみれば食べ飽きているから、張り切って特上を注文するとウニやイクラなど、富山で獲れないネタが使われていることです。

 県も地物だけを使った「握りセット」を「富山湾鮨」と命名し、普及に努めてきましたが、なかなか「富山=寿司」とはなっていないのが現状でした。

 そんな事態を打開し、ガストロノミーツーリズムを盛り上げていくために2023年に立ち上げられたのが「寿司といえば、富山」プロジェクトなのです。

 実は私は、祖父が富山出身で父が疎開していた関係で、富山県となじみがあったため、このプロジェクトの一翼を担うことになりました。

富山県中を探し回って見つけた「世界標準の寿司屋」

 当初は、先程ご説明したような状況から、「無理だと思いますよ」とお伝えしたのですが、たしかに、富山の魚はポテンシャルが高い。

 富山県中を探し回れば、技術をしっかり磨いてきた世界標準の寿司屋があるのでは、そこに行ったら翌日は町寿司の楽しさも満喫できると感じ、お話を引き受けました。

 そして、約2年間、地元の料理人や役所の方などに「いい寿司屋はありませんか?」と聞き込みをし、実際に足を運んで、見つけたのです。

 東京の名店にひけをとらない味を誇りつつも、値段は東京の2分の1程度で済む隠れた名店たちを。その代表例を紹介します。

「寿司といえば、富山」を体現する1軒

 氷見市にある「成希(なるき)」は、隠れた名店と言うのは失礼かもしれません。すでに世界の富裕層たちは噂を聞きつけ、足を運んでいます。

 主人の滝本成希さんは、銀座の老舗「久兵衛」や、「鮨なんば」などで修業を積んだ後、2022年7月に生家で開業しました。

 氷見や能登をコースで表現したいと考え、魚は氷見港で揚がったものが中心です。

 初夏に富山に来たらまずは味わいたい白エビの握りや、氷見マグロ、そして冬は氷見の寒ブリなど、たらふく食べておまかせコースは2万円から。東京ではあり得ない価格です。

 近辺には温泉もあるので、食べたついでに温泉でリラックスするのもよいでしょう。

 この他にもおすすめの名店は、本書にまとめているのでご参考にしてください。

2000円台から楽しめる「富山湾鮨」

 世界標準の寿司をお得に堪能するのもいいですが、あくまでもリーズナブルに富山の寿司を楽しみたいという方には、先述の「富山湾鮨」がおすすめです。

 これは、富山湾の魚だけを使った一人前の握りのセットで、値段は2700~5500円程度。協賛している県内の約50軒で提供されています。

「富山湾鮨」と検索すると、提供店の一覧が地図上に表示されるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。