インフレ定着で「3条件」満たす状況に
デフレ脱却で始めた超緩和政策が転化!?
金融抑圧は、第2次世界大戦後の欧米諸国で広く用いられた。そして高水準の政府債務を、財政緊縮や増税に頼らず、時間をかけて解消する手段として機能した。
日本でも終戦直後、戦時中に半ば強制的に国民に購入させた戦時国債の実質価値が(意図したわけではないものの)インフレで大幅に毀損してしまったのが、その例だといえる。
2026年のアメリカでは利下げがさらに進行し、金融抑圧に対する警戒論が議論される可能性がある。
日本では、終戦直後を除くと、黒田前日銀総裁時代の異次元緩和は、金融抑圧の上記の3つの条件のうち、第一の低金利政策と、第二の銀行・保険・日銀による国債の構造的保有に関しては、明確に該当する。しかし、第三のインフレ率は長らく低迷していた。
つまり日本では「金融抑圧を成立させる3つの条件のうち2つは整っていたが、インフレが伴わなかった。このため金融抑圧が成立しているとはいえない状態」だった。
しかし、近年は物価上昇が顕著となり、インフレが定着している状況だ。家計の実質所得・実質資産が圧迫され、金融抑圧的効果が現れ始めた状況といえる。
金融抑圧とインフレ政策は、しばしば混同される。ただし、目的とメカニズムが異なる。
インフレ政策の目的は、デフレ脱却により需要を喚起し、賃金・投資の好循環を実現することだ。異次元金融緩和は、この意味でのインフレ政策だった。
インフレ政策の手段としては、金融緩和が用いられる。これによって期待インフレ率の引き上げを狙い、経済成長を促そうとする。
これに対して金融抑圧の目的は、政府債務の実質的軽減だ。その手段はすでに述べたように、低金利の固定、国債保有の制度化、そしてインフレの容認だ。
日本ではインフレ政策として始めたものが、結果として、このところの金融抑圧に転化しつつあると考えることもできる。
タームプレミアム上昇による長期金利上昇
市場の政府と日銀に対する「審判と警告」
日本はこのまま金融抑圧に進むことになるのか?
ここで、金融抑圧が機能するためには、重要な前提があることに注意しなければならない。それは、市場が「現在の体制が将来も維持される」と信じていることだ。
ところが現在の日本では、その前提が揺らぎ始めている。
インフレが基調として定着しつつある一方で、毎年度のように大型補正予算編成が恒常化、さらには積極財政を掲げる高市政権の発足で、財政拡張は例外的措置ではなく、常態となり始めている。そしてそれにもかかわらず、金融政策の正常化への道筋は依然として不透明だ。
この状況下で、国債を長期に保有する投資家は、次のように考えざるを得ない。







