完成度は大きく進歩したが
残された課題も
筆者は2021年、テストコースで行われた走行試験の報道公開を取り上げた記事で、「速走行時に相当の前後動が発生し、乗り心地はお世辞にも良いとは言えなかった」と記した。担当者は「EVのようなトランスミッションを持たない車両であれば解消できる」と語っていたので、今回の試乗では乗り心地の変化が気になっていた。
結論から言えば、加速はかなりスムーズになった。専用軌道上を走る鉄道とは比較できないが、路面電車に近いレベルまで達しているといってよい。しかし、ブレーキ制御にはまだまだ問題が多いように感じた。
2024年の試乗記事で筆者は「赤信号で前方車両が停止する場合、手動運転であれば惰行で徐々にブレーキをかけていくが、自動運転では距離によってはアクセルを踏んだあとブレーキをかけるので乗り心地が悪くなる」と記した。
進むか止まるか迷っている技量が低いドライバーのような運転は、残念ながら解消されておらず、信号が黄色から赤に変わるタイミングでの交差点進入や、車両の割り込みで運転手の手動ブレーキが介入する場面もあった。乗客が不安を感じる運転では、公共交通として失格である。
ただ担当者によれば、これは特性の異なるEVバスの導入にあたり、セッティングが詰め切れていないことも要因だという。交差点の走行は現在、カメラで信号の色を判断しているが、将来的にバスと信号機が通信して制御するPTPS(公共車両優先システム)が導入できれば解決できるかもしれない。
自動運転が既存道路に完璧に合わせるのは限界がある。前述のSLAMも沿線の風景を点群データ化し、LiDARとステレオカメラで照合しながら現在位置を特定しているが、相当のコストと手間がかかるのは想像に難くない。そうであれば道路を自動運転にフィットさせる方が容易である。PTPS導入やバス専用レーンの設置など、東広島市の取り組みが実用化のカギを握っていると言えるだろう。
JR西日本は2027年度に鏡山公園入口~池ノ上学生宿舎前バス停間でレベル4自動運転による営業運転開始を目指し、国土交通省へ認可申請を行う方針だ。同区間は700m超に過ぎないが、実績を重ねながら自動運転区間を徐々に拡大していく。
西条駅~広島大学間の路線バスはJRバス中国と芸陽バスが運行している。自動運転バスの運行事業者をどうするか、独自の「BRT」として運行するか、現行の路線バスに組み込む形か、営業形態は検討中だ。これにあわせて東広島市も、専用レーンの設置に関する議論を2027年度までに取りまとめたいとしている。
2027年度を「2020年代半ば」と言ってよいのかは疑問が残るが、同社によれば開発はロードマップ通りに進んでいるとの認識だという。この1年で自動運転の完成度は大きく進歩したが、完成にはまだ課題が多いと感じた。あと1年でどこまで完成度を高められるのか、ラストスパートに期待したい。







