試験走行に用いられたN700S型J0編成「確認試験車」(筆者撮影)試験走行に用いられたN700S型J0編成「確認試験車」(筆者撮影)

JR東海が5月10日深夜、東海道新幹線の浜松~静岡間で実施した自動運転の試験専用車両を公開した。筆者も参加したが、実用化が始まる5年後を待つのがもったいないほどの出来であった。その驚きの精度と実現した仕組みについて、解説する。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

自動運転参入を表明した
JR東海が車両を公開

 交通に革命をもたらすとして期待が集まった自動車の自動運転。各国は2020年代半ばをめどに特定条件下で完全自動運転を行う「レベル4」の実現を目指しており、一部で実証実験も始まっているが、技術的ハードルは高いようで順調とは言い難いのが実情だ。

 一方で今後、本格的な自動運転時代に突入するのが確実とみられているのが鉄道だ。レールという決まったルートを走行し、線路上への立ち入りが禁止されている鉄道では運転の自動化は比較的容易で、既に1960年代にはボタンひとつで出発から走行、停車までの一通りの操作をこなす自動運転の実証実験が営業列車で行われている。

 1980年代以降に開業した新交通システムや地下鉄では、運転士が乗務しつつ運転操作をATO(自動列車運転装置)に委ねる形の自動運転が実用化されており、近年では2021年3月にJR常磐線各駅停車がATOを導入。今後は山手線、京浜東北線、南武線などでもATOを導入し、順次ワンマン運転化していく予定だ。

 東京メトロも既にATO運転を行っていた地下鉄有楽町線を2022年8月にワンマン化。2025年度に丸ノ内線で運転士が乗務しない自動運転の実証実験を行う計画だ。私鉄でも東急東横線が2023年3月からワンマン運転を開始。また東武大師線と南海和歌山港線は今年度中にも実証実験を実施する。

 そんな中、自動運転への参入を表明したのが高速鉄道のガリバー、東海道新幹線を運行するJR東海だ。同社は5月10日深夜、浜松~静岡間で実施したATO走行試験を初めて報道公開し、あわせて2028年以降に投入する「N700S」型車両にATOを搭載して順次、自動運転を開始する予定と発表した(その時点で耐用年数がわずかな「N700A」型車両については改造の対象外)。

 自動運転について同社は「将来の鉄道環境を考えて相当前から検討はしていた」と説明するが、コロナ以降の業務改革の一環として取り組みは加速。キモとなるATOは2021年11月頃から試験走行を重ねており、ようやく公開できる水準に仕上がったということだ。