部下を持ち、チームを率いる立場になった時、まず何から考えるでしょう。「部下をぐいぐい引っ張る強いリーダーシップを発揮しよう」「部下がモチベーション高く働けるよう、後ろから支えるようなリーダーになろう」…など、自分がとるべきリーダーシップのスタイルから考える人も多いのではないでしょうか。しかし、リーダーがまず考えるべきは、そのようなことではありません。第3回はリーダーシップの構造を軸に、リーダーシップを振るうこととは何かを考えます。本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです。

【リーダーシップ集中講義:第3回】「自分は何をすべきか」から考えるリーダーが失敗する理由Photo: Adobe Stock

リーダーシップの構造

 さて第1回第2回の記事から、リーダーシップが何であるかということが、ぼんやりとわかってきただろうか。今度はリーダーシップを構造的に捉えることから、リーダーシップを振るうこととは何かを考えていくことにしよう。

 リーダーシップとは他者に影響を与えるプロセスであると同時に、個人や集団の努力を促進するプロセスでもある。組織の中で目標を達成するために、組織のメンバーは行動や活動をしなくてはならない。

 そう考えれば、リーダーシップとは共有する目標を達成するための活動をフォロワーから引き出し、その活動に影響を与えるプロセスであると言い換えられる。なお、目標の達成は成果と読み替えても問題はない。

 このことを単純に図式化すれば、下記のようになる。

【リーダーシップ集中講義:第3回】「自分は何をすべきか」から考えるリーダーが失敗する理由出所:鈴木竜太『リーダーシップの科学』(ダイヤモンド社、2019年)P30を引用

 定義をもとにした単純な理解であるが、このような図式が成立する時に、リーダーシップが発揮されたと言える。

まずは目標や成果を考える

 この基本構造をもとにした時、リーダーシップを思考する上で最も注意すべきことは、矢印の起点である左から考えるのではなく、終点である右から考えるということである。

 まずリーダーが検討しなければならないのは、リーダーとしての働きかけではなく、目標や成果である。

 例えば、大きな目標として、企業(あるいは職場)の業績向上があったとしても、それをどのように達成するかについては、複数のアプローチがあるはずだ。

 新しいサービスや製品を積極的に開発していくことによるのか、今以上に歩留率を下げ、ミスを減らすことを通じて達成するのか。あるいは個々人が能力を上げることによって達成していくのか。その方向性によってフォロワーがとるべき行動は異なり、必然的にリーダーの働きかけも異なることになる。

 つまり、目指すべき目標や成果と、それにつながるフォロワーの行動や活動が規定されなければ、リーダーの働きかけが決まらない

 しかし、リーダーシップを振るうことを考えるときに、多くのリーダーが最初に考えてしまうことは、「では自分は何をしたら良いか」ということだろう。

 リーダーシップにはさまざまなタイプがある。書籍やビジネス雑誌で「○○リーダーシップ」という用語をたくさん見たことがあるだろうし、使ってみようと試みてきた人もいるだろう。それらを参考にする際には、実際にどんなリーダーシップを振るうかという点にまず着目するのは自然なことである。

 ただし、この構造を踏まえれば、リーダーシップのスタイルやタイプ、振る舞いから考えることに、それほど意味がないことがわかる。どのようなリーダーシップのスタイルやタイプ、振る舞いを用いるかだけを考えても、(たまたまうまくいくことはあるかもしれないが)効果的にリーダーシップは振るえない。

 リーダーシップは左から右へと作用するが、リーダーシップを考える際には、図の右から左へと考えていくことが重要になる。目標や成果を決め、それをもたらすフォロワーたちに期待する行動や活動は何かを考えたのちに、初めて自分が何をしたら良いかを考えられるのである。