むしろ、その“前職”こそが宇宙での仕事と絶妙にかみ合い、価値を最大化してきたと言えるのかもしれません。今回はその職歴に光を当てながら、宇宙飛行士という仕事がどんな専門性を持っているのか見てみましょう。
歴史を紐解くと、宇宙飛行士の原型は戦闘機パイロットでした。冷戦真っただ中(1945~1991)の米ソは「どちらが先に宇宙の頂に旗を立てるか」という技術競争を繰り広げていました。
過酷な環境に耐え、複雑極まる機体を操れる人材を欲していたのです。超音速の世界で高Gに晒されても冷静に判断できる――そんなスキルセットはそのままロケットの操縦能力へと転換できます。そして、軍組織で培った規律は政府主導で大規模な人数が関わる宇宙開発プロジェクトと相性が抜群でした。
まさに「宇宙×軍事」の直結ルートです。
ISS建設以降の宇宙飛行士には
サイエンスの素養が求められるように
やがて、国際宇宙ステーション(ISS)の建設が始まるころになると、必要とされる専門性が少しずつ変わり始めます。今では当たり前のように宇宙飛行士が滞在しているISSの建設が始まったのは1998年。そして主要部分の建築が完成したのは2011年7月です。
ISSは全体の大きさが約108.5m×72.8mで、サッカー場とほとんど同じ大きさです。質量は約420tにもなります。ここには5人程度の宇宙飛行士が常に滞在しており、常に何かしらの実験を行っています。
その中に、細胞観察を行う設備や、無重力空間(正確には少しだけ重力があるので微小重力)で物を燃やす燃焼実験設備など、様々な実験設備が搭載されています。
つまり、船内は“研究室そのもの”になり、宇宙飛行士は実験を行う技術者であり、その様子を地上に伝えるレポーターのような役割を担うようになりました。
したがって、宇宙飛行士には科学実験が行える素養が求められるようになってきます。「宇宙×サイエンス」といったところでしょうか。
直接的な科学への精通は必要ないですが、科学研究に関わっていくのに必要なロジカルな考え方などの重要性が増していきました。
物理学者、生命科学者、さらには微小重力材料工学の研究者まで、白衣がそのままフライトスーツに縫い替えられる時代が到来したといっても過言ではありません。







