宇宙は人工衛星とロケットだけではない。宇宙空間の「ロードサービス」を提供するアストロスケールや、「宇宙専門商社」も登場した。さらに既存企業でも、損保会社は宇宙関連の専門保険商品の営業を強化し、ビッグ4コンサルティングファームや広告最大手電通グループも宇宙に乗り出す。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#6では、今後大きく広がる宇宙市場の多様な獲得合戦を見てみよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
人工衛星市場爆発で膨らむ「ロードサービス」
1.8兆円規模に成長期待の軌道上サービス市場
ほんの少し前までは「誰がお金払うの」と言われた宇宙のサービス。だが現在ではそれを提供する企業は、400億円超を集める国内最大手の宇宙スタートアップに成長した。世界で初めて宇宙デブリ(ごみ)除去サービスを事業化したアストロスケールのことだ。
本特集#2で紹介した民間人工衛星の打ち上げ急増で、宇宙空間を飛ぶ物体の数が激増。危うく衛星同士が衝突しそうになる事態も起きている。宇宙空間のデブリ対策の必要性は5月のG7(先進7カ国)首脳宣言でも言及されたほどだ。
しかしデブリ回収の技術難易度は非常に高い。例えるなら「沖縄からヘリコプターで出発し、北海道のどこかに落ちているリュックサックを探して、リュックにダメージを与えないようにそっと接近して回収する」に近い超高度な技術が必要になるという。アストロスケールは、こうした離れ業を世界で初めて可能にしたのだ。
各国の政府のほか、計600機もの小型衛星を運用する英ワンウェブなどとも契約する。「軌道上での衛星の数が増えると、その故障機を回収するほか、メンテナンスや燃料補給などを行う軌道上サービスのニーズが増える。ここには1.8兆円規模の市場があるとされており、先駆けてサービスを提供していく」と岡田光信CEO(最高経営責任者)は自信を見せる。
かつてはロケットと人工衛星くらいしか存在しなかった宇宙市場に、続々と新サービスが登場している。アストロスケールの軌道上サービス、言うなれば「宇宙のロードサービス」はまさにその一つだ。人工衛星事業に参入する企業が増えたことで、必要となるサービスの需要が増えたのだ。実はこのように、新たな需要に対応する宇宙新サービスにさまざまな企業が参入している。
ビッグ4コンサルティングファーム、それにこの分野に関しては世界初となる「宇宙専門商社」(本特集#8で紹介)。宇宙への参入企業が増えれば必要となる保険サービスや、さらに広告最大手の電通グループも宇宙事業にがっちり絡んでいる。スタートアップも大手企業も群がるさまざまな宇宙サービスの深層をのぞいてみよう。