共有する目標を考える
ただ、何を成果とすべきか、何を達成していくべきかという点は、実は共通の目標を達成するプロセスを論じるリーダーシップ論においては所与なのである。
リーダーにとって、何を目標や成果とするのか決めることは非常に重要な仕事であり、それは組織の命運を握る。では、より良き目標や成果をどのように設定すれば良いのか。何が良い目標であるのか。
実は、この点はリーダーシップ論の範疇を超えるものである。リーダーシップ論では目標がなんであるかについては特に問わない。リーダーシップの観点から言えば、フォロワーとその目標が共有されているのであれば十分である。
とはいえ、目標や目指す成果の立て方そのものもフォロワーに影響を与えることをリーダーは忘れてはならない。
本田技研工業の創業者である本田宗一郎は逸話の多いリーダーの一人であるが、創業時からチャレンジングな目標を示してきた。1954年には当時世界最高峰と言われていたマン島でのTTレースへの出場を宣言し、当初は世界との力の差を見せつけられるが、1961年には悲願の初優勝を遂げる。また四輪車にも事業を展開した1964年には、最高峰のF1にも打って出る。いずれもそこで何かを学べれば良いというレベルではなく、まさに世界一を目指すという目標を設定した。
ホンダとすれば、目先の業績を目標にしても良かったわけだが、本田は世界のレースで勝つ車をつくることを目指し、若い技術者達を鼓舞した。
目標は、単に目指すもの、達成すべきものという存在だけではなく、実際はフォロワーを強く動機づける源泉ともなる。どのような目標を掲げるのかはリーダーが考えるべき大きな仕事であるし、優れたリーダーはその能力に長けている。また同じ目標に向かうように見えて、その提示の仕方によってはリーダーシップにも関わることになる。
ただ、(繰り返すが)リーダーシップ論はこのような目標を立てるためのテクニックを示唆してくれるものではないし、それに必要な能力を示してはいない。目標を設定した上で、それをいかに達成していくかという点に関わる理論なのである。
次回は、目標や成果を設定したうえで、フォロワーにどのように動いてもらうかについて考えよう。
(本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章を一部抜粋・編集したものです)






