世界でシリーズ累計259万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんと、子別指導塾「坪田塾」経営者で、映画化もされた『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(ビリギャル)の著者である坪田信貴さん。ビリギャルシリーズの最新作である『勝手な夢を押しつける親を憎む優等生と、東大は無理とバカにされた学年ビリが、現役合格した話』の発売を機に、約7年ぶりに対談が実現しました。
第2回目の今回は、本を書く上で大切にしていること、塾長としての失敗エピソードなどさまざまな話が飛び交いました。

佐々木圭一(以下、佐々木):『勝手な夢を押しつける親を憎む優等生と、東大は無理とバカにされた学年ビリが、現役合格した話』を読みながら、気になるページの角を折ってドッグイアを作り、大事な箇所に線を引いたのですが、ドッグイアだらけ、線だらけになっちゃいました。
坪田信貴(以下、坪田):本当だ(笑)。ありがとうございます。
佐々木:坪田塾を舞台に、5人の生徒の話が小説仕立てでそれぞれ展開されていきますが、まるで自分が6人目の生徒として机を並べて座っているような没入感がありました。一人ひとりのエピソードがとてもリアルで…すべてモデルとなる子どもたちがいるからこそですね。
坪田:今回の本では「隣在性」と「迫真性」をすごく意識したので、そう言ってもらえるのは嬉しいなあ。この本を読んだ人に「ここに出てくる子どもたちは成長できたかもしれないけれど、自分には無理」ではなく、「もしかしたら自分にもできるかも」と思ってもらいたかったので、そこまでリアルに感じていただけて本当に良かったです。
勉強でも何でも、隣在性と迫真性が感じられないと、人って動かないんですよね。例えば、「困っている人がいたら助けよう」「友達を大切にしよう」などと言われても、まるで標語みたいでリアルさがまるでないから「そりゃそうだよね」で終わってしまい、行動にはつながりにくい。でも、「杉の木が生い茂る山で、山火事が発生した。パチパチという音とともに焦げ臭いにおいが漂い、熱風も近づいている。そんな中、あなたの30メートルほど先におばあさんがケガをしてうずくまっている…そういう時に、一歩踏み出して助けようという気持ちになることが大切だよ」と言われたら、まるで自分がその場にいるようにリアルにイメージできるし、どういう判断をすればいいか真剣に考えられるでしょう?
それにしても、「自分が6人目の生徒になった気分」という表現は、さすが佐々木さんですね。リアルを感じていただけたことが、すごく伝わります。
佐々木:本当に臨場感がすごかったんですよ。ドッグイアが本の後半に集中しているのは、前半は熱中しすぎて折るのを忘れていたからなんです(笑)
坪田:普段あまり本を読まないうちの妻も、「この本は3日で読んだ」と言っていました。これってすごいことなんです(笑)。
モデルとなる生徒のことは、私がいろいろ妻に話していたし、実際に会ったこともあるから、よりリアルに感じられたみたい。「あなたってすごい仕事をしているのね」って言われました。
佐々木:そんなこと言われたことないから羨ましい!(笑)
この本には、東大在学中の「遥先生」が重要な登場人物の一人として出てきます。本を通して最も変化したのは、5人の生徒よりも遥先生かもと思うぐらい、生徒と触れ合う中でどんどん成長している姿が印象的でした。
坪田:生徒は皆、実在するモデルがいますが、遥先生については明確なモデルがいるわけではありません。ただ、参考にした人は何人かいて、実は若いころの僕自身も投影されています。
佐々木:あとがきに「遥先生は僕の若い頃の分身でもある」と書いてあってビックリしました! 聡明でクールビューティーな女性を脳内でイメージしながら読み進めていたのに、最後の最後で急に坪田さんの顔に入れ替わっちゃった。
坪田:わはは、すみません! 若いころは僕も気弱になることが多く、壁にぶつかるたびに遥先生のように「無理なものは無理」「できるはずがない」と思ってしまったこともあったんです。
佐々木:ネタバレになるかもしれないですけれど…この本の中で、坪田先生が大きな失敗をしでかすんですよね。ビックリしました。坪田さんも失敗するんだ! そしてそれを書いちゃうんだ! と。
坪田:本で紹介した失敗は、実際にあったことなんです。塾を始めた頃は、失敗も多かったですから。
子どもたち一人ひとりに伴走するのは大変だし、問題や課題が次々に噴出して、とても自分だけでは解決できませんでした。何かヒントを得たくて、海外も含めいろいろな先生方にコンタクトを取って質問したり、実際に会いに行って話を聞いたりもしました。
その中で出てきたもので、この本でも一つのキーワードになっているのが「迷路」です。
佐々木:「迷路」は、注意力散漫で落ち着きがなく、高3になっても九九が言えない健太君とのエピソードで出てきましたね。小学生向けの迷路をやらせたら、迷路の壁を無視して、ゴールまで一直線に線を引いてしまったという。
坪田:そうです。健太君のようなタイプが「考えながら進む」という習慣を身につけるには、迷路が合っていると。そもそも迷路って、事前に先を見ながら「ここは行けそうだな」とある程度あたりをつけていかねばならないから、予測認知行動が重要で、すごく脳を使うんです。迷路というヒントを得られたのは、大きな収穫でした。
佐々木:なるほど、迷路ってすごいんですね。
坪田:ビリギャルの映画で、生卵を立てるシーンがありますが、これもワシントン大学の先生から教えてもらったものです。「生卵なんて立つはずがない」という主人公・さやかちゃんの思い込みを、微調整をしながら卵を実際に立てて見せることで、「どうせ自分には無理」と思い込んでいる状況を打ち破る。認知のフレームを変えるというワークです。
佐々木:印象的なシーンなので覚えています。いろいろなインプットを得て、今の坪田塾があるのですね。
坪田:しかし…失敗の話に戻りますが、迷路を経て少しずつ勉強に対するモチベーションが上がり、着実に成長してきた健太君が、初めて行った過去問のテストで9割正解したのに、「カンニング」扱いしてしまったんです。初めての過去問で、通常こんな成績を取るのはあり得ないから、「カンニングしていない?」と確認してしまい、彼を傷つけてしまいました。
その後、仲間の力もあって塾で勉強し続けてくれましたが、受験した大学すべてに合格した健太君に、「先生、謝ってください!」と言われたときには、即座にジャンピング土下座しました。
佐々木:坪田さんに疑われたのが悔しくて、「受かって土下座させてやる!」というのが彼のモチベーションになったんですよね。
坪田:「先生のおかげでこれだけ伸びたのに、9割も解けて先生が喜んでくれると思ったのに、疑われてショックでむかついた。先生は、自分のことを信じていなかったんだね。まだまだだね!」と言われました。そうか、僕は子どもたちのことはおろか、自分自身をも信じられていなかったんだ…とハッとさせられましたね。遥先生が学び、成長していく姿は、まさに私自身の姿でもあります。大人が子どもたちから学び、成長できることも多いのだということも知ってほしくて、自分の失敗経験をこの本でさらけ出したんです。
佐々木圭一(ささき・けいいち)コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki
坪田信貴(つぼた・のぶたか)坪田塾塾長
累計120万部突破の書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)や累計10万部突破の書籍『人間は9タイプ』の著者。これまでに1300人以上の子どもたちを子別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。大企業の人材育成コンサルタントもつとめ、起業家・経営者としての顔も持つ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。趣味は妻と子どもと遊ぶこと。東京都在住。








