そうした中で、ソニーは幸か不幸か自社でパネルを持っていないテレビメーカーである。2000年代初頭、薄型テレビパネル自体が珍しく、技術的な価値を持っていた時代には、シャープの亀山モデルのように、自社のパネルを持っていることが非常に大きな強みであったが、液晶パネルがコモディティ化した現在では、パネルを持っていることは、必ずしも強みとは言いきれない。

 ソニーは2000年代初頭に年間1000万台程度のテレビを生産しており、2000年代半ば頃には生産台数は2240万台程度に膨れ上がっていたが、セットの市場シェアだけを追うビジネスでは、テレビの価格下落が激しく利益を得ることができなかった。

 そこで、2010年代頃から、規模の経済性を働かせられる程度の一定の数量をグローバルな市場で稼ぎながらも、パネルメーカーが市場で大型テレビを叩き売るような価格競争には参加せず、パネルを「持たないことの強み」を活かして、高価格帯の商品だけに絞り込む戦略に転換していた。

 これが現在までソニーが世界のテレビ市場で生き残ってきた戦略である。一方のTCLやサムスンにしてみれば、ソニーはこれまで美味しいところだけを持っていったテレビセットメーカーでもあった。

ソニーとTCLの合弁が
両社にとって合理的と言える理由

 こうした背景を前提としたときに、今回のソニーとTCLの合弁は両社にとって合理的な選択と言えよう。ソニーにしてみれば、TCLというパネルの安定的な供給源と、数多くのテレビセットを開発製造することによる規模の経済性のメリットが享受できる。

 近年、消費者のテレビ離れが日本国内だけでなく世界的にも進んでいる。2000年代初頭に年間1000万台くらいの市場であった日本国内のテレビ市場は、現在年間500万台を割り込んでいる。長期的な視点に立てば、ソニー単独のテレビの開発生産の数量だけでは、十分な規模の経済性が得られなくなる。TCLの数を売る力を活用して、調達や開発などを共通化してコスト低減ができるところはコストを引き下げることが肝要だ。