ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者の森武司氏は、かつて家電量販店でパソコン売上台数日本一を獲得し、その後ビジネスの世界で成功を収めた人物。今回インタビューしたのは、森氏と驚くほど似た経歴を持つ株式会社ヒロプロ代表取締役・廣池基史氏だ。
新卒で広告代理店に入社したはずが、「広告を学ぶために、まずは現場で商品を売ってこい」と家電量販店に配属。「3ヵ月で本社に戻す」と言われていたのに、気づけば3年半もピンク色の法被を着て、メガホン片手にPHSを売り続けていた。その長い現場経験が、実は今の経営者としての原点になっているという。廣池氏が語る「巻き込み力の原点」とは――。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「3ヵ月で本社に戻す」と言われて3年半……家電量販店で働き続けた新卒が、広告代理店社長になれたワケPhoto: Adobe Stock

「3ヵ月で本社に戻す」は何だったのか?
家電量販店での新卒時代

――廣池さんは新卒でイベント系の広告会社に入社されたそうですね。でも実際は家電量販店で3年半働いていた。この経験が今にどうつながっているんでしょうか?

廣池基史(以下、廣池):そうなんです。当時、新宿の家電量販店に配属されて、PHS(Personal Handy-phone System)の販売員をやってました。
最初は「3ヵ月で本社に戻す」って言われてたんですけど、結局3年半いましたね。

ですが、この経験が今の広告の仕事に生きてるんです。
1秒、2秒で人が通り過ぎる売り場で、いかにお客さまの興味を引かせるか、声のかけ方、メッセージの打ち出し方など。
メーカーや制作会社から送られてくる広告は、消費者視点がなくお客さまの心を動かせるものが少なかったのです。カッコいいデザインや機能のグラフィックばかりで、アート作品のようなクリエイティブが多く。

だから私たちは手書きでPOPをつくったり、オリジナルのメッセージを考えたりしました。
「抽選で◎◎商品がこの場で当たります!」とか「今買ったらお得な◎◎が付いてきます!」といった感じで、現場で「本当に売れる」「消費者の心を動かせる」広告を自分たちでつくっていました。

結果的に、その家電量販店のグループで、当時のPHS新規契約販売台数で日本一の記録を残すことができました。

――その視点が、本社に戻ってからも活きたと。

廣池:そうですね。私が本社に戻ったのは3年以上経過した後でしたので、営業としては1年目の新卒と一緒のステージでした。そのため新規営業や顧客もゼロから。
でも、自分には3年以上かけて売り場でつながったメーカーの人たちや現場の仲間たちがいました。携帯電話のメーカーさんに営業をかけるなど、自身の経験から得た繋がりを活かし、本社復帰後の一発目で数千万円の携帯電話のキャンペーン案件を受注できました。

売り場にいたからこそ、どうやったらお客さんに興味を持ってもらえるか、どうやったら売り場の人たちが売りやすいかという視点で、販売促進キャンペーンのプランニングすることができました。
POPの見せ方も、什器の軽量化も、全部現場目線。メーカー担当者に「売り場をわかってるな」と評価してもらえたのが大きかったですね。

日本一になれた意外な理由

――結果的に、3年半の“現場経験”が最強の下積みになったわけですね。

廣池:そうなんです。しかも、売り場では自分の担当商品だけではなく、他のキャリアの商品も案内してたんですよ。
お客さんがドコモを求めているなら、無理にPHSを売らずにドコモの販売員に案内する。そうすると、まわりの販売員からも信頼されて、今度は「PHSを探してる人がいたらこっちに案内してください」って協力してくれるようになる。

私が日本一の新規契約の販売数を結果的に残せたのも、自分の接客力だけじゃなくて、周りからつなげてもらえた結果でした。それが「信頼があるから力がつく」という私の考え方の原点ですね。

――チームワークが結果を生んだ、と。

廣池:まさにそうです。自分だけが売上を伸ばそうとするのではなく、まず周りと信頼関係を築く。困ったときに助けてもらえる関係をつくる。それが結果的に自分の成果にもつながる。この考え方は、23歳から26歳までの売り場での経験で養われました。

その後のキャリアも、大手広告代理店でも仕事をしてきましたが、「クライアントさん(お客さま)からの要望や課題に答えられているか」「広告制作物に対して消費者視点があるかどうか」をクリエイターの方たちに聞くようにしてます。
この現場での3年以上の下積み経験が、25年続けてきた広告の仕事における原点となっております。

――最後に、今「下積みが長すぎる」「このままでいいのか」と悩んでいる読者に向けて、メッセージをいただけますか?

廣池:私も当時は「はやく本社で仕事をしたい」とずっと思ってました。
でも、結果的にあの下積み時代があったから今があると胸を張って言えます。
環境を理由にしたり、「会社に放置されてるのでは?」と腐ったりするのではなく、今いる場所や環境でまずは成果を残す。そこで信頼を得る。その信頼が力に変わり、次のチャンスを生むのです。

『スタートアップ芸人』の森さんも、似たような境遇から「仲間力」で道を切り開いてきました。もし今、自分の立ち位置に悩んでる人がいたら、『スタートアップ芸人』は参考になる書籍だと思いますよ。

(本書は『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関する特別投稿です。)