そこで構成作家やディレクターらの「構成・演出・編集」というマジックによって、「家事や育児を一手に押しつけられて、疲れ切った長男」へと生まれ変わらせる。そうすれば効率的に「おもしろいVTR」ができるので、制作会社、技術スタッフ、メイク、出演者、局の編成、CM担当者、スポンサー企業など「みんな」がハッピーで丸くおさまる。
「いくらテレビの世界でも、そんなモラルハザードが起きるわけがない」と半信半疑の人も多いだろうが、これはテレビに限らずあらゆる業界で起きている組織の問題だ。
日本の製造業で相次いだ
「データ改ざん」問題との相似
例えば、2017年あたりから、日本を代表する「ものづくり企業」で相次いでデータ改ざんが発覚したことがあったが、あれも「みんなのため」が大きな動機だ。1970年代からのデータ改ざんが発覚した神戸製鋼の調査報告書にはこんな指摘がある。
《受注の獲得と納期の達成を至上命題とする生産・納期優先の風土、事業部門を横断した人事交流や人事異動がほとんど存在しない閉鎖的な組織、適切な教育・研修や懲戒処分が行われてこなかった状況、顧客仕様を逸脱しても、一定程度ならば安全性の問題はないため、出荷しても構わないといった誤った考え方》(2018年3月6日 神戸製鋼所 https://www.kobelco.co.jp/releases/1199080_15541.html)
厳密に顧客仕様に合わせた形でつくり直しなどをしていたら、納期がズレる。現場には負担になるし、管理職は会社から責任を追及されてしまう。
作業スケジュールがズレたことで、新しい受注を受けることができなくなれば、会社にも損害を与えてしまうので、自分たちの給料や待遇にもはねかえってくる。
そこで「みんな」をハッピーに丸くおさめるため、現場で常態化していたのが「データ改ざん」だったというわけだ。モラルを欠いた行為だということは現場の誰もがわかっていたが、「和」を乱さぬよう見て見ないふりをした。
視聴率と納期を至上命題として、局と制作会社という閉鎖的な上下関係のもとでつくられるテレビの現場で「過剰な演出」が常態化している構造と、根っこは同じだ。







