こうして物件単価が上昇すると、需要喚起する要因が無い中では、売れ行きは必然的に悪くなる。こうなると、たとえ供給余力があっても実際に供給戸数が減るか、在庫が増えるか、初月販売率(売り出した月に契約に至った割合)が下がることになる。

1LDK・2LDKが増える可能性がある理由

 2025年の初月契約率は63.9%で、前年(66.9%)比で3%悪化し、2年連続で売れ行き好調の目安である70%を割り込んでいる。東京23区の平均価格は1億3613万円で、平方メートル単価は210.9万円と前年比でそれぞれ21.8%、23.3%アップした。単価が上がると、グロス価格を低く抑えるために専有面積が減少する。

 70平方メートル以上あった3LDKは、今や平均66平方メートルほどとなっている。今後は住宅ローン控除の対象が無条件に40平方メートル以上になったことで、これからプランを変更できる2年後を目安に、徐々に面積は小さくなることが可能性がある。40平方メートル台の資産性はファミリー物件並みに高く、その意味で投資家を含めた需要は増えそうだ。

 つまり、いまだに7割を占める3LDKに対して、1LDK・2LDKが増える可能性がある。世帯構成も3〜4人から1〜2人が増えてきたり、都心と郊外・地方を使い分ける二拠点生活も増えてきている。単価が高いがゆえの多様なライフスタイルを柔軟に考えることが必要になってきたということだ。

 1億円を超える供給は5669戸で前年比2021戸増加し、供給総戸数の25.8%を占めるに至った。立地が悪化しながら、1億円を超える価格になると、買い手は自ずと少なくなる。

 都心では面積が大きくなるほど単価は上がる傾向になるが、郊外ではグロス価格が高いと買い手がいなくなるので単価は下がる傾向になる。今後は一層価格設定が難しい時代がやってくることが予想される。

 タワーマンションの売れ行きも鈍化し始めている。12月の超高層物件(20階以上)の契約率は64.5%で、前年同月は90.5%だった。前年同月比とはいえ、立地が違うものを比較するのは参考値程度なのだが、タワーほど高額化が進み、修繕積立金等のランニングコストの上昇幅が大きい。

 好立地は集客力が高いが、郊外型の高額化は集客範囲が狭いがゆえに、地元で買える層が絶対的に不足する可能性が高くなってきた。

 最後に、この不動産経済研究所の首都圏マンション市場動向の月次データで摩訶不思議なことがある。毎年12月が最も供給戸数が多くなるのだが、これは一般的にはあり得ない話だ。師走の忙しい時期にマンションの申し込み抽選や契約はしない。販売センターが閉まっている物件も多く、大人の事情がありそうだ。

 ではこの12月の数値は何を意味するのか考えると、販売住戸の実態調査を毎月やっているものの、正確に把握できず、翌月以降に判明した住戸を12月にまとめて集計しているのではないかと私は推測している。最近は、「アンダー」と言って広告前に内々に販売するケースもある。販売物件も全件把握していない可能性も高くなり、いくらで売ったかも分からない住戸も増えた。

 供給者側が寡占になっていく一方で、市況は分かりにくくなっている。だからこそ、数値の結果だけでなく、市況の背景を理解することが重要なのだと考えている。本コラムもその参考にされることを願っている。

(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)