エージェント化を目指す意味はここにあります。組織のエージェント化とは、AIを「操作する対象」から「任せて、育てて、時に失敗を許容するパートナー」へと格上げすることです。それにより、以下のようなメリットを享受することが可能になります。

 指示待ちからの解放:常に人間が監視しなくても、自律的に状況を判断して動く存在がいれば、人間は「決断」と「責任を持つ」という本質的な業務に集中できます。

 死角の補完:人間の注意力には限界があります。エージェントは、私たちが寝ている間も、見落としている兆候やチャンスを拾い上げ、先回りして提示してくれます。

 これらは、AIを単なる「完璧な機械」として扱っていては得られない果実です。「多少のミスはあるが、自ら考えて動こうとする新人」としてエージェントに接し、権限を渡し、フィードバックを与えて育てる。そうした「他者を信頼し、任せる」というマネジメントの姿勢を、対人間だけでなく対AIでも持てるかどうかが岐路となります。

 エージェント化への挑戦は、技術の導入プロセスである以上に、私たち自身の「独りよがりな仕事の進め方」からの脱却プロセスなのです。人間を置き換えるためではなく、人間というボトルネックを突破するために、私たちはエージェントという「同僚」を必要としているのです。

エージェントが動く
世界で人間が担うもの

 エージェントが本当に自律的に動くようになったとき、問いの中心は技術から人間へと移ります。人は何を決め、何を引き受け、どこで責任を持つのか。エージェントの導入は、人間の役割を問い直す作業でもあります。

 業務を仕組み化し、非属人化を進めることは重要です。しかし、それだけでは、人間の仕事は単にエージェントに置き換えられていくだけになります。その先で求められるのは、状況に応じて最善を判断し、責任を持ってやり遂げる力です。一見すると属人的に見えるこの領域こそ、エージェントには代替しにくい部分でもあります。

 次回は、エージェント時代において人間が担うべき役割について、もう一段踏み込んで考えていきます。今回触れた「協働としてのAI」という視点を手がかりに、人とエージェントの分業や責任の構造を具体的に整理する予定です。エージェントと人間はどのように分業し、どのような関係を築くのか。その構造を整理していきたいと思います。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)