子会社の日本旅行が
計画する宇宙旅行販売
ここからは新たな取り組みの紹介だ。2024年9月に取り上げたように、JR西日本は宇宙分野を活用した取り組みを進めているが、別角度の宇宙事業が登場した。
ひとつは小型衛星の宇宙配送サービス「宇宙宅配便」に取り組むスペースワンとの協業だ。あまり知られていないが、JR西日本は2024年12月に同社に出資している。もちろんJR西日本が宇宙に荷物を打ち上げるわけではないが、拠点の和歌山県東牟婁郡串本町は営業エリアにある。
そこで車両基地の用地をロケットの組み立て場所として提供したり、子会社の日本旅行が見学ツアーを行ったり、はたまた特急「くろしお」にラッピングしたり、陰に日なたに事業を後押ししている。
残念ながらスペースワンは2024年3月に打ち上げた1号機、同年12月の2号機が相次いで失敗してしまった。2月25日には改良した3号機の打ち上げを予定しており、能力増強型の開発も進んでいるという。こんなところにもJR西日本の影があるとは驚いた。
そしてもうひとつの「突飛」な取り組みが、前出の日本旅行が計画する「宇宙旅行」の販売だ。民間人のみの宇宙旅行は2021年9月、アメリカで初めて行われ、同年12月には実業家の前澤友作氏も搭乗したことで話題になった。ただ、参加には長期の訓練と数十億円ともいわれる費用が必要で、一般人の手の届くものではない。
それは日本旅行も承知するところで、まずは打ち上げの見学など地上で体験する宇宙「SPACE Tour1.0」、続いて宇宙経由の地域間輸送「SPACE Tour2.0」、そして、宇宙空間で滞在・生活が可能な「SPACE Tour3.0」のステップを踏んでいきたいとしている。
日本旅行はあくまで旅行会社としてツアーを開催する立場であり、使用するロケット・宇宙船はスペースX社などの確立された技術を用いる前提だ。当然ながら、JR西日本グループで独自開発する予定はない。
未来を想定した「旅行ツアー募集ポスター」には「204X年」との表記があった。半世紀ぶりの有人月周回ミッション「アルテミス2」の打ち上げが間もなく行われるなど宇宙開発は盛り上がりを見せているが、あと20年で宇宙旅行時代が到来するというのは、かなり楽観的な想定だろう。だが、それでもさまざまな可能性を追求するのは、JR西日本グループらしい意欲的な取り組みである。
各取り組みに共通するのは、積極的に外部と連携している点だ。自前主義を捨て去り、グループ会社・関係会社・パートナー企業の技術と、運用側の本体のノウハウを組み合わせることで、技術ありきではない実用的なソリューションに仕上がっている。
また、技術開発を担当部署で完結させず、他部署も巻き込んで可能性を追求することで、鉄道会社にありがちな縦割りを打破し、横断的に活用できる技術となっているのも特徴だ。
こうしたソリューション開発は技術を確立してから水平展開するのが通常だが、開発・改良と並行して積極的に外販するのも興味深い。異なる視点を取り入れることで、新たなニーズやアイデアを発掘し、機能向上につなげている。
全ては取り上げられなかったが、この他にも興味深い取り組みが多々あった。その中でもJR西日本が出資する「アジア航測」と共同開発した「鉄道MMS(点群データ)」の活用、グループ会社「JR西日本メンテック」の清掃業務の効率化・省人化は、稿を改めて紹介したい。







