初代竜王である島朗と羽生、佐藤康光、森内俊之の4人で行われていた研究会「島研」では、容易には結論が出せない終盤の検討に多くの時間が割かれたという。
しかし、それから30年以上が経った今は、自分の頭で考え抜くことがある意味やりにくくなっている。AIを使えば誰でもその局面の「最善手」を簡単に調べられるようになったからだ。
AIを活用してどんどん「知識」を吸収したほうがいいのか、それに頼らず自分で考えることを優先したほうがいいのか――。棋士たちは常にそのような葛藤を抱えている。
木村は言う。
「考え抜いた末の結論が正しいかどうかをAIに聞くぐらいがちょうどいいのに、気がつくとAIに頼っている自分がいます。もっと自分なりに考えるようにしないといけないですね」
プロ棋士に求められるのは
将棋の実力だけではない
将棋の読みのアウトプットを求められるのは対局の時ばかりではない。人の対局の解説をする時も同様だ。実際に指された手以外にも言及する必要があるという意味では、対局の時以上に読み筋が明らかになるとも言える。
その手にはどんな狙いがあるのか、どうしてこの手を指さないのか――。プロの将棋はアマチュアには簡単に理解できないことが多い。そうした疑問を解きほぐすのが解説の役目だ。
木村は「解説名人」として知られる。棋士の本音やエピソードなどを巧みに織り交ぜつつ、指し手についても的確に解説できるのが、そう呼ばれるゆえんだ。
かつて行われていた「ニコニコ生放送」の解説では視聴者からの質問に答えるコーナーもあり、恋愛やお酒などについてざっくばらんに語っていた。棋士としての実力だけでなく、話題の幅広さも肝要となる仕事だ。
解説で話す内容は、指し手に関することに偏り過ぎてはいけない。特に初心者にとっては理解するのが難しくなるからだ。木村は「手の解説が50、雑談が50ぐらい」を理想としているという。
大盤解説をする際には、目の前にいるファンの表情を意識する。ターゲットを決めて、どんな話題を選べばいいかを考える時もある。
「鬼瓦みたいな表情をしている人がいたら、その人が笑ったかどうかを見ます。その人が笑ったら次の人にいこう、という感じです」







