解説名人・木村が直面する
AIが変えた将棋解説の難しさ
近年は人と人とのコミュニケーションの場である解説にも、AIの影響が及んでいる。対局中継の画面には常時、AIの形勢判断や候補手が表示されるようになったからだ。
『50代、それでも戦い続ける 将棋指しの衰勢と孤独と熱情と』(村瀬信也、木村一基、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
AIが「最善」とする手にはどんな狙いがあるのか、対局者がその手を選ばなかったのはなぜか――。AIの手の特徴を知ることなしには解説を務められない時代が到来している。
木村によると、最近特に解説をしづらいのは角換わりだという。藤井聡太や永瀬拓矢らがAIを活用して行っている研究は、他の棋士が容易には理解が追いつかないほどの深さに達しているからだ。
「対局者がどこまで苦労して研究しているか、という話をしたいんですけど、指し手の意味を知らないとそれができないんですよ。どこまでが理解できて、どこから理解できていないのかを解説できませんからね。普段から勉強していないといけません」
面白いうえに指し手への理解が深まる解説の裏には地道な努力がある。加齢のせいか、最近は頭の中に浮かぶ言葉が「3分の1ぐらい」になったという。それでも木村は言う。
「自分の解説を評価していただけるのはありがたいですし、やっていて楽しいところもある。これからも依頼があればやっていきたいです」







