「あんな勝手なことをされたら母親としては許せません」
「寒さなんてそれぐらいどうとでもなりますよ。中学が寒いのであれば教務室以外にもストーブを置きますし、校長になればそれぐらい。本当の理由は何ですか。本当は松江に書きたいものがなくなってしまったんじゃないですか」
「ですが、前にお話していた虫の話。あれ書きましょうよ。ヘブンさんなら何でも書けますし、私も何だってしますから」
「この屋敷が気に入らないのであれば新居を探しますし、中学が気に入らないのであれば、何なりとおっしゃってください。生徒たちが物足りないのであれば、もっと厳しく教えます。洋服の制服が気に入らないのであれば、着物にしたっていい」
錦織の必死のお願いにヘブンは一言「ごめんなさい」と退ける。
「松江サムイ、それだけ」
ヘブンは錦織から離れ、ヘブンの仕事場に錦織だけがひとりぽつーんと残された。
隣の部屋の奥にトキとフミが申し訳なさそうに立っている。錦織はまるで隔離された人のようだ。
「ごめんなさい」とフミが申し訳なさそうにぽつり。
いやあ、ええ? と錦織はうなだれるしかない。
第91回に続いて、部屋の位置で、人間関係を表現する村橋直樹演出。ぽつーんとした錦織の小ささが胸をしめつける。
さて、本日は、締めるときは締め、笑わすときは笑わす、池脇千鶴さんのコメントを紹介しよう。
――ここまで演じられてきて、現場の雰囲気はいかがですか?
とにかく楽しい撮影現場です。こんなに楽しいのは初めてかもしれません。フミ自身が明るい人なのでそこに助けられているところもあり、撮影の合間の皆さんとの空気も「こんなにリラックスしていていいのかな?」と思うほど和やかです。
高石あかりちゃんは物怖じ(ものおじ)しなくて、すごく頼れる方です。私はあかりちゃんの胸を借りているところが、かなりあります。緊張でドキドキしながら現場に行っても、あかりちゃんがブレずに構えていてくれているから安心できるんです。
最近はクランクアップが近づいてきて、1日の撮影が終わると胸が詰まるような思いに駆られます。
――フミはトキとヘブンをどんな気持ちで見守っていると思われますか?
第14週でトキとおじじ様それぞれの恋がいっぺんに成就した時は、もう呆気(あっけ)にとられて夢なのか現実なのかわからないような状態でした。そのシーンの自分の顔が本当にほうけていたのを覚えています(笑)。
結婚の挨拶(あいさつ)パーティーでヘブンさんがみんなの嘘(うそ)について言及した時は、トキが隠したいなら隠していいし、親がでしゃばることじゃないと思っていました。きっとタエさんも同じ気持ちで親として一歩引いていたと思います。「娘は娘」というのが、タエとフミの分かり合っている部分ですね。
結婚を機に引っ越した武家屋敷は広く、コソコソ声も「コソコソになってないやろ!」とツッコミたくなるほど狭かった長屋住まいとは大違い。お芝居の距離感も変わりました。あかりちゃんが演じるトキも大人びてきて、なんだか遠く感じますね。子トキ(福地美晴)の頃から見守ってきて、現代の「友達親子」のように仲良く買い物に行ったりするのが楽しかったので、少し寂しさも感じます。
第18週でトキが石を投げられた時は、本当に腹立たしかったです。ヘブンさんと同じく、いち早く犯人を探してやり返しに行きたいぐらいの気持ちでした。トキ自身がヘブンさんのために我慢しているのに親である自分が邪魔してはいけないとぐっと堪えましたが、あんな勝手なことをされたら母親としては許せません。









