Aさんのケースは残念ながら、法律的には難しい判断になることが多いのが現実です。住宅購入は大きな事情ですが、「業務上の必要性」が高ければ、個人的事情として整理されてしまいます。
感情的には納得できなくても、法的には会社側に分がある。ここに、この問題のつらさがあります。
転勤トラブルを防ぐ!Q&Aで深掘り
ここからは、社会保険労務士の筆者が現場で強く感じている考えも交えながら、Q&A方式で深掘りします。実務で重要なのは、「法律上どうか」だけではありません。「なぜ揉めたのか」「どこで行き違ったのか」を理解することです。多くのトラブルは、転勤命令そのものよりも、その伝え方・受け止め方に原因があります。
Q)会社は、社員に対して自由に転勤を命じることができるのですか。
A)自由ではありません。転勤命令が「有効」とされるためには、(1)業務上の必要性、(2)不当な動機・目的がないこと、(3)社員に生じる不利益が、社会通念上、通常甘受すべき程度を著しく超えないこと、という3要件を満たす必要があります。
特に最近のトラブルでは、(1)は満たしていても、(3)が問題になるケースが増えています。介護や育児、配偶者の就労など、社員の生活背景が多様化しているからです。「業務上必要だから」で終わらせず、不利益の中身まで検討しているかが問われます。
Q)育児休業や介護休業から復帰した直後でも、転勤はあり得ますか。
A)あり得ますが、会社は極めて慎重であるべきです。法律上、休業取得を理由とした不利益取扱いは禁止されています。一方で、業務上の合理的必要性があれば、転勤そのものがただちに違法になるわけではありません。
しかし「違法でなければ問題ない」わけではありません。復帰直後は生活が再構築途中であり、会社が一方的に転勤を命じれば、信頼関係が一気に崩れます。結果として、退職や紛争につながることも少なくありません。







