Q)どのような場合に、転勤が難しい事情として考慮されやすいですか。

A)ポイントは「代替可能性」と「不利益の重さ」です。住宅購入や通勤の不便さといった事情は、感情的には重くても、法的評価は限定的になる傾向があります。

 一方で、要介護の家族を主として介護している場合や、育児環境に現実的な代替手段がない場合は、転勤による不利益が大きいと評価されやすくなります。

Q)会社として、転勤に関して大切にすべき考え方は何ですか。

A)転勤は「人を動かすこと」ではなく、「仕事を回すための手段」だという意識です。トラブルになる会社ほど、「前から、そうしてきたから」という理由で転勤を命じています。説明なき異動、一方的な判断は、社員の不信感を招くだけです。なぜ今なのか、なぜこの人なのかを説明するだけで、トラブルの多くは防げます。

 後編『40代独身男性が転勤を拒否できたワケ、切り札となった「3枚の書類」の存在』では、全く違う結末を迎えるBさんのケースも紹介しましょう。「断れる転勤」と「断るのが難しい転勤」の〈分かれ目〉を読み解いていきます。
>>『40代独身男性が転勤を拒否できたワケ、切り札となった「3枚の書類」の存在』

三戸礼子(みと・あやこ)
社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所 特定社会保険労務士
1965年生まれ、山口県出身。2007年1月社会保険労務士登録、2015年5月特定社会保険労務士付記。2000年1月に大槻経営労務管理事務所に入所以来、主に大規模事業所の担当者として給与計算や社会保険実務などの業務に従事。2017年10月からは労務コンサルティング事業部に所属。社会保険労務士の3号業務である相談業務に従事し、複数の事業所を担当。前職が大学の文部技官であったこともあり、実務セミナー講師や執筆活動にも注力。学生への指導や教授の学会資料の作成サポートなどで培った経験を活かし、「わかりやすい説明・伝わる内容」をモットーに活動。