Uber EatsPhoto by Yuito Tanaka

フードデリバリー業界の覇権争いが再び激化している。その中心にいるのは、「お店と同じ価格」を旗印に掲げる韓国発の「ロケットナウ」だ。同サービスの急成長を受け、既存各社は価格戦略の抜本的な見直しを迫られている。業界最大手のUber Eats(ウーバーイーツ)も、サブスクリプション会員を対象に配達料とサービス料を無料化する方針を打ち出し、真っ向から反撃に転じる。だが、クーポンで一時的にシェアを奪っても、その先に待っているのはジリ貧の我慢比べに他ならない。コロナ禍の教訓は生かされるのか。本稿では、再び過熱するフードデリバリー業界の舞台裏と、その構造的な課題を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

サブスク加入でサービス料を無料化
ロケットナウの殴り込みにウーバーが反撃へ

 フードデリバリー事業「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を運営するUber Eats Japan(ウーバーイーツ・ジャパン)は、サブスクリプション会員向けに、これまで有料だった配達サービス料を「無料化」することを明らかにした。

 ウーバーは2022年11月から、フードデリバリーとタクシー配車の双方で特典を得られる定額制サービス「Uber One」を展開している。これまで配達手数料のみが無料だったが、今後はサービス料も0円となる。月額498円を支払えば、実質的に「商品代金のみ」での利用が可能となり、価格面でのハードルを一気に下げることで利用者の拡大を狙う構えだ。

 その背景にあるのは、新興勢力の激しい追い上げだ。韓国のEC大手Coupang(クーパン)が率いる「Rocket Now(ロケットナウ)」が25年1月に日本に上陸し、「送料・サービス料ゼロ」という破壊的な価格設定を武器に急成長。上陸からわずか8カ月でアプリのダウンロード数は100万を突破し、既存大手の牙城を崩し始めているのだ。

JR新橋駅構内に張られたロケットナウの広告(2025年12月24日撮影)JR新橋駅構内に張られたロケットナウの広告(2025年12月24日撮影) Photo by Y.T.

 コロナ禍の巣ごもり需要を追い風に、フードデリバリー市場は一気に拡大した。当時は雨後のたけのこのように事業者が乱立し、クーポンを大量にばらまくことでシェア争奪戦が繰り広げられた。しかし、その結果は過酷な消耗戦だった。資金力の乏しい事業者から順に脱落していく中、市場はいったん停滞期を迎えていたが、そこに「黒船」として現れたのが、ロケットナウだ。

 サービスの差別化が困難なこの業界において、価格勝負が再発すれば、再び泥沼の消耗戦に陥りかねない。各社には「コロナ禍の二の舞い」だけは避けたいとの思惑がにじむが、業界は再び荒波にもまれようとしている。

 次ページでは、綱渡り状態にあるフードデリバリー業界の舞台裏と構造的な課題に迫る。