物流大戦Photo by Takeshi Shigeishi

年末繁忙期を迎え、宅配便大手の佐川急便が創業来初めて、災害以外の理由で集荷停止に追い込まれた。同社は「予測を大きく上回る荷物増加」が背景にあると説明するが、実際には別の理由があった。東京・江東区の巨大物流拠点「Xフロンティア」だ。関係者への取材から浮かび上がったのは、大型施設への集約戦略の失敗、協力運送会社の離反、そして急拡大する越境EC事業への対応のほころびだった。12月中旬を過ぎた今も配達遅延は続き、年末年始の繁忙期を前に出口は見えない。物流業界を震撼させた「佐川ショック」の真相に迫る。(物流ジャーナリスト 刈屋大輔、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「想定外の物量」は本当か
現場を襲った未曽有の混乱

「急激な物量の増加に伴い、全国的にお荷物のお届けに遅れが生じております」

 2025年12月10日、SGホールディングス傘下の佐川急便が公式サイトに掲載した文言である。一見すると、年末にありがちな配送遅延の案内のようだ。しかし、その裏側で同社の物流ネットワーク全体を揺るがす事態が進行していた。

 12月4日、佐川は本州と四国のほぼ全域で、「飛脚航空便」などを除く荷物の集荷を1日限定で停止した。北海道、九州・沖縄を除く広範囲で、営業所への持ち込みや法人向け集荷が制限される異例の対応だった。災害以外の理由による集荷停止は、同社にとって創業来初めてだ。

 兆候は11月下旬から表れていた。11月26日、同社は全国的な配達遅延の発生を公表し、配達日時を指定した荷物でも遅れる可能性があるとして、会員向けの「配達予定通知」サービスを停止。翌27日には宅配便最大手のヤマト運輸も遅延を公表し、物流業界全体が逼迫した状況に陥った。

 12月5日に集荷は再開されたものの、遅延は解消されなかった。関西圏では12月9日から集荷受付時間を14時から12時へと前倒しする措置が取られた。佐川の担当者は「年末は1年で最も物量が多い時期で、いつまでに正常化すると断言できる状況ではない」と説明する。

 同社が挙げた理由は、ブラックフライデーや年末商戦が重なったことによる想定超の物量増加だった。しかし、年末の物流繁忙は毎年のことであり、ブラックフライデーもすでに日本に定着している。

 なぜ今年に限って、前例のない集荷停止にまで至ったのか。実は表向きの説明とは別の“真の理由”が存在することが分かった。次ページでそれを明らかにする。