彼女は新卒の社員に比べ年齢がいってからの入社だったので、同期の社員とはあまり馴染めなかったようです。

「先輩、一緒にランチいいですか?」

 いつもひとりでお弁当を食べている私に香奈は声をかけてくれました。

「尚美でいいよ、同い年でしょ?」

「じゃ、私のことも香奈って呼んで」

結婚は香奈さんに近づくための
綿密に練られていた犯行計画

 香奈は美しく服装もスタイリッシュですが、気取った感じはなく誰からも好かれる存在でした。それでも恋愛に関しては奥手というか、しっかりした価値観を持っているので、同期の男性陣からは高嶺(たかね)の花と思われ、近づきにくい存在だったかもしれません。

 警察から逮捕の連絡を受けた時、被害女性の氏名は教えてもらうことができませんでした。被害者が香奈だと気が付いたのは、裁判で被害者の証言を聞いた時です。

 夫が香奈に関心があることはわかっていましたが、まさかレイプするなんて……。

 犯行は計画的でした。そのシナリオは、私と結婚する前から作られたものでした。私は夫の犯行に利用されたのです。

 良太は幼い頃から成績優秀で有名な国立大学を卒業していますが、社内では有望視されている人材ではありませんでした。要領が悪く、コミュニケーションが下手で、同期の中では目立たない社員でした。

 結婚の時、良太は恋愛の自由を認めて欲しいと言い、つまり、愛人を作るような物言いでしたが、私は外見も平凡な良太にそんな女性ができることはないと思っていたのです。

 そんな良太は、香奈の視界には入っていませんでした。香奈が良太の存在に気がついたのは、私の夫になったからです。

突然の退職が引き金となり
夫は犯行を決意した

 結婚後、香奈は私の家によく遊びに来るようになりました。3人で食事をしたり、温泉に宿泊したこともありました。夫は憧れの香奈を目の前に無邪気にはしゃいでいましたが、私は嫉妬を覚えるようなことはありませんでした。

 私は香奈が心から好きでした。私にとって香奈は、たとえ夫が好きになったとしても仕方がないと思えるほど大切な友達だったのです。