年末年始、良太が実家に帰るという時も、私は東京に残っていました。子どもができれば、そうもいかないとは思ってはいましたが、できるだけ関わりたくない存在だったのです。とても困った時に頼れるような関係ではありませんでした。

 ところがそんな高飛車な両親の態度は、息子が犯罪者になった途端、180度変わったのです。

 もう手持ちの現金も少なくなっていた頃、田舎から夫の両親が自宅を訪ねてきました。

「尚美さん、迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい。尚美さんさえよかったら、うちに来てもらえないかしら?」

 あの傲慢な夫婦が、そう言って私に頭を下げたのです。まさに、渡りに船でした。

子どもが生まれると
家庭内カーストが上がった気がした

 夫が出所して帰ってきてから、すぐに第1子を妊娠しました。この瞬間が、私の人生で一番幸せだったかもしれません。家族全員が私の体調を気遣い、私は生まれて初めて主役が回ってきたような毎日でした。

 子どもは女の子で、夫はとても喜んでいました。

「これからは女の子が活躍する時代だし、子どもはこの子だけで十分だよ」

 夫の言葉に、両親は強く反対しました。

「何言ってるの!男の子が欲しいわ。ねえ、尚美さん」

 私も義母の意見には賛成でした。男の子である必要はありませんが、子どもはもっと欲しい。私は母親になったことで、家族内のカーストが上がったような感覚でした。

 男の子を産めば、もっと上にいけるはず。子どもがひとりだけでは、時間を持て余してしまう。

「私も男の子は欲しいです。頑張ろうね、良太」

「ああ……」

 この頃は、まだ夫は子作りを嫌がりませんでした。そして、生まれてきたのが次女です。

 長女が成長するにつれて、夫は「教育パパ」になっていきました。学歴のない私に娘の教育は任せられないと言わんばかりに、娘の宿題を熱心に見てあげるようになったのです。

 娘が生まれてからは、毎年、アメリカやオーストラリアに家族旅行に行くようになりました。夫は将来、娘を留学させたいのだそうです。