金利上昇に「適切な心配」がされているか
政権が越えてはいけないレッドラインも指摘
ChatGPTはさらに、単に金利が上がったことを問題視するだけではなく、「それに対して『適切な心配』がなされているかどうかが重要だ」と指摘した。
そして次のように言った。「私は、金利と市場を恐れている政権」に投票するという。
ここで、「恐れている」というのは、「逃げている」という意味ではなく、「理解している」という意味だ。
具体的には、第一に、金利上昇の原因を分解して理解していることだ。(1)成長期待型(将来経済が良くなる見通しによる金利上昇)、(2)インフレ調整型(物価上昇への対応)、(3)財政不信・制度不安型(将来の国債増発懸念)を区別し、(3)が問題だと認識することだ。
第二に「どこまでなら許容できるか」を数値で把握していることだ。
これは「金利上昇は気にしなくていい」と無視したり、「日本国債は自国通貨建てだから増発しても問題はない」、あるいは「日本銀行が国債を買えば済む」と考えたりすることと違う。また、金利上昇を市場や投機筋のせいにするのとも違う。
こうしたChatGPTの金利上昇に対する視点は大変、重要だと思った。
ChatGPTは「政権が越えてはならないレッドラインは、長期金利上昇を『問題ではない』と公然と否定することだ」という。さらに「これを軽視した瞬間に、政権は市場との対話能力を失うだろう」と予想した。
そして、次のような印象的な言葉で議論をまとめた。
「マーケットは、国民投票より早く政権にNOを突きつけるだろう」
生成AIは特定の政治勢力を助けたり、逆に排除したりすることはない。この点でSNSと異なる。しかし、有権者を賢くすることについては、大きな貢献をするだろう。この点で、生成AIは検索エンジンとは全く異なる存在だ。
ただし最後に次の点には注意が必要だ。それは、生成AIの助言は、入力の仕方によって焦点が変わることがあることだ。基本的な価値観は、最終的には人間が選ばなければならない。
しかし、少なくとも「何を基準に考えるべきか」を可視化するという点で、生成AIはこれまで有権者が十分に持っていなかった思考に、重要な補助線を与えてくれるだろう。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)







