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米オープンAIが営利法人への転換を決め、200兆円超の投資計画を打ち出した。生成AIの「ChatGPT」で旋風を巻き起こした同社だが、その裏ではライバルの猛追を受け、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が「コードレッド(緊急事態宣言)」を発出するほどの焦燥感に包まれている。生き残りのために狙いを定めたのは米政府の「AI国家戦略」だ。民間主導から政府との一体化へ――。AIブームの終焉を見据え、したたかに生き残りを図る同社の内情を浮き彫りにする。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)
オープンAIが
“営利”企業になった理由
生成AI(人工知能)「ChatGPT」の開発企業である米AIスタートアップのオープンAIが2025年10月、米カリフォルニア州の規制当局に「営利企業」として認可された。熾烈化するAI開発競争で優位に立つための一手だが、ライバルがひしめくAI市場で勝ち抜くのは容易でない実態も浮かび上がる。
22年にChatGPTが登場して以降、米国株式市場の活況を支えてきたAIブーム。その投資熱を巻き起こすきっかけとなったオープンAIは、15年に非営利団体として設立された。非営利団体としたのは、人類全体に貢献するAIの構築を使命としたためだ。公共性・公平性を重視したAI開発を進めるという理念に基づいた起業だった。
しかし、オープンAIは19年、AI開発に投入する膨大な費用を賄うため、営利子会社を設立。さらに24年12月、非営利部門が株式を持ちながらも支配権は手放す形で、公共利益と社会貢献を目的とした営利法人格である「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)」に転換することを検討していると表明した。
この営利化計画は、株主であるイーロン・マスク氏(米テスラ最高経営責任者〈CEO〉)などの猛烈な反対を受けた。オープンAIは25年5月に計画をいったん断念する方針を発表した。
だが、10月には一転、同社のブログ上で「PBCに移行した」と発表した。カリフォルニア州司法長官のロブ・ボンタ氏が同月、オープンAIがPBCに転換することを認可したのだ。
オープンAIの出資者であるマイクロソフトは、その新会社のおよそ27%を保有する。これにより、従来あった利益上限や株式制限といった制約から脱却できるようになった。オープンAIを支配してきた非営利団体も、約1300億ドル(約20兆円)相当の同社株を持つことになった。
拡張路線を打ち出すも
具体性に乏しい投資計画
オープンAIが拡張路線を明確にしたのが、同社のサム・アルトマンCEOが25年10月28日に行ったライブ配信だった。そこで同氏は、「オープンAIが1兆4000億ドル(約219兆円)を投じて30ギガワット相当の演算リソースを開発する」との決意を表明したのだ。
この発言に対し、投資家からは懐疑的な声が上がった。11月、あるポッドキャストが企画したアルトマン氏へのインタビューで、AI投資で実績のある米アルティメーター・キャピタル・マネージメントの創始者ブラッド・ガースナー氏が、「売り上げが130億ドル(約2兆円)のオープンAIが、どうやって1兆4000億ドルも投資できるのか?」とアルトマン氏に詰め寄ったのだ。売り上げの130億ドルとは米マイクロソフトがオープンAIに投資した金額だ。
質問を受けたアルトマン氏は、珍しく激高し、「オープンAIの株式を入手したい人は山ほどいる」と豪語した。しかし、質問に対する直接的な回答は避け、はぐらかす格好になった。
AIデータセンターの拡張に必要な巨額の資金を調達できるのか?というガースナー氏の指摘は、もっともだろう。この一件を受け、米メディアの間には、「オープンAIが過剰な拡大を追求するあまり、実は資金面で無理を重ねていることを指摘されたことがこたえたのではないか」と推測が広まった。
オープンAIの売上高は130億ドルを上回る200億ドル(約3.1兆円)に達していたが、その規模は、1兆ドル超の巨額調達計画と比べると桁違いに小さい。
次ページでは、オープンAIが巨額の投資計画を打ち出した背景を探る。また、ライバルの追い上げを受け緊急事態宣言を出して推し進める新事業や、米国の「AI国家戦略」に食い込んで“政府との一体化”をもくろむ理由に迫る。







