倉庫にも在庫がない。数日前からどんどん減っているのは分かっていたから、1週間ほど前に本部へ発注していたのだけれども、メーカーでも生産が追いついていないらしく、なかなか入ってこないということが分かっていた。

「店長どうしましょう。棚がスカスカになってます」
「とりあえず棚は埋めておいてくれや」
「何で埋めましょう?」
「そんなんお前がリーチインやねんから、お前が決めたらええやろ」

 僕はとりあえず、普段あまり大学生が飲まないタイプの商品を、空になった棚にも並べることにした。さすがに冷蔵庫を空っぽのままにはできないので、苦肉の策として並べたのだった。

 なんと。その日から、それまでたいして売れなかった商品が急に売れ始めた。棚の位置を変えただけで売れたのだ。

自分で考えて動くことで
ただの作業が「仕事」に変わる

 買いたかった飲み物が置いていなかったから、代わりに買ったのだろうか。僕は不思議に思って、別の商品をその棚に置いてみた。するとやっぱり売れるのだ。どうやらその棚に並べると売れるようなのだ。

 やや評判の悪い飲み物でもそこに並べると、飛ぶようにとまではいかないけれども、それなりに売れるから面白い。

 メーカーからはどんどん新しい商品が発売される。

「よし、今回はこの商品を売ってみよう」

 大学生ならきっと飲みたがるだろうと考えて発注し、例の棚に並べる。

 予想通りに行くこともあれば、思ったほど売れないこともあるけれども、もしも、ほかの人がリーチインの担当だったらたぶん並べられていなかった商品だ。僕だから売れたのだと思うとかなり嬉しかった。

『選ばない仕事選び』書影選ばない仕事選び』(浅生 鴨、筑摩書房)

 ここでようやく僕は仕事をしたのだった。僕の行動が世界をほんの少し変えたのだ。ただ倉庫から同じ商品を運んで補充していたときの僕は、作業しかしていなかった。そうか、これが仕事なんだと思った。自分の行動が何かを変える。それが面白かった。

「主任。あの棚に置いた商品が売れるんですよ」

 僕は大発見を得意げに報告した。

「せやで。見やすい高さにあるものがよく売れるねん。だから売りたいものがあったらそこに置くんやで」

 主任はロボットの顔を変えず、淡々とそう言った。知っていたのかよ。だったらどうして最初から教えてくれないんだ。僕は鼻白んだ。