2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』が刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
部下に厳しく注意できない悩み
「もっと部下に厳しく注意しないからダメなんだ」
管理職になって1~2年のSさんが、上司から叱られたという話を聞いた。
上司から厳しく指導されてきたSさんだが、自分は部下に対して厳しくなれないと悩んでいる。
「言わなきゃいけないこともわかっているけど……」
注意の仕方によってはハラスメントだと言われかねない。
部下が不快な思いをして、急に退職すると言い出したら困るという思いもあって、強く言えないという。
同じように悩んでいる人もいるのではないだろうか。
新卒が定着しない「花形の部署」
『組織の違和感』(ダイヤモンド社)の中に、印象的なエピソードが載っていた。
組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏が、クライアントの例として挙げているものだ。
新卒で入社し、花形の部署に配属されてやる気満々だった女子社員が、配属されてみると意外に地味な作業が多いことに耐えられなくなり退職願を出した。
海外向けの仕事をすると思っていた彼女は、「せっかくこの会社に入ったのにこんな仕事なんて」と思ってしまったのだ。
実はこの部署は、新卒が入っては辞めての定着しない部署なのだという。
こういうとき、あなたが上司ならどうするだろうか?
「あ~あ、またか。最近の若者は仕事とはどういうものかわかっていないな。もうちょっと骨のあるやつが入ってきてくれないものか」
そう思いながら、何も言わずに退職願を受け取る……
なんていうこと、けっこう多いのではないか。
勅使川原氏は、「相手は決意して言ってくるわけだから、何を言っても無駄だなと思ってしまうのもわかります」としたうえで、こう述べている。
でも、それこそが「決めつけ」です。
冷静に考えると、彼女はまだ新卒で、仕事への解像度が低いまま不満を表明することもできず、一方的に会社を見切ってしまったんですね。
この場合、上司はきちんとネガティブなことも含めてフィードバックしなければいけませんでした。
――『組織の違和感』p.226より
上司がフィードバックすることを怠っていたから、新入社員が定着しなかったのだ。
新入社員が未熟で、視野が狭窄しているのなら、上司はそれを指摘しなくてはならなかった。
もっと普通に言えばいい
それも「きみは何か勘違いしているようだけど~」なんて強く言うのではなく、相手の話を聞き、「こういう意図がある仕事なんだよ」と説明すればいい。
勅使川原氏は、「もっと普通に言えばいい」と表現している。
お互いの違和感を、素直に、普通に言いながら調整していけばいいのである。
冒頭のSさんも、「上司みたいに厳しく言うべきなのか、それとも何も言わないほうがいいのか」ではなく、「普通に言う」ことで悩みが解決するに違いない。
その際は、本書に書かれている、観察や相手に合わせたコミュニケーション法が大いに役立つだろう。
(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)
小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太