強いチームをつくるためには、「そもそも心理的リソースを消耗しない」ようなチームの「構造」をつくることが重要です。たとえば、適切なルールを決めておけば、いちいちメンバーは「これはどう処理すればいいんだろう?」と考えることによって、心理的リソースを無駄遣いする必要がありません。このように、いい意味で「思考停止」できるのも、「構造」のひとつです。この記事では、新刊『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』(櫻本真理・著)から抜粋しながら、心理的リソースを消耗しない「チームの構造」を考える際のポイントについて解説します。
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強いチームに欠かせない「構造」とは?
「チームに活気がない」「チームの成績も低迷している」……。
そのように感じられるとき、リーダーはメンバーの「心理的リソース」(面倒くさい仕事でも、「よし、やるぞ」と思う心のエネルギー)が消耗していることを疑う必要があります。そして、心理的リソースの消耗を止め、それを回復させるために適切なアプローチをする必要があります(その方法は『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』に詳しく書いています)。
しかし、そのような「応急処置」に終始するのはいけません。強いチームをつくるためには「そもそも心理的リソースを消耗しない」ような、チームの「構造」をつくることが、マネジメントをするうえで非常に重要なポイントになるのです。
というのは、「目標・役割・ルール・仕組み」といった、チームの「構造=枠組み」を明確にすることによって、チームの心理的リソースの消耗を防ぐことができるからです。
どういうことか?
サッカーを例に考えてみたいと思います。
なぜ、サッカーとうゲームは成立するのか?
敵味方合わせて22人の選手がグラウンドに集められたとしましょう。そして、ボールだけを渡されて、「自由に試合してみよう」と言われたらどうなるでしょうか? 最初の数分は、全員がボールに群がり、ただ走り回るだけの混乱状態になるはずです。なぜなら、この場には「構造」がないからです。
ゲームが成立するためには、まず、「目標」がはっきりしていなければなりません。
サッカーというゲームには、「相手のゴールにボールを入れると得点」「より多く点を取ったチームが勝ち」という明確な目標があります。これがないと、選手は「何をすればいいのか」がわからず、ボールを蹴ったり、走ったりすること自体が目的化してしまいます。
次に、「役割」。フォワードは攻める、ディフェンダーは守る、ゴールキーパーは最後の砦になる─そうした役割が決まっているからこそ、選手は、自分がやるべきことが明確になり、迷わずに動けるようになります。もし役割がなければ、無秩序状態に陥り、「お前、邪魔だよ」「お前こそ邪魔だよ」などと揉め始めるかもしれません。
さらに、「ルール」。オフサイドやファウルといったルール(判断基準)があるからこそ、選手は「ここまでやっていい」「これは反則」という判断を瞬時に下せます。ルールがなければ、プレーのたびに「これはやっても大丈夫か?」と迷い、心理的リソースを無駄に使うことになります。それに、オフサイドを無視すればいくらでも得点できるので、ゲームそのものが成立しなくなるでしょう。
最後に、「仕組み」です。
サッカーには、フィールドの境界線やゴールポスト、ペナルティエリアやセンターサークルといった「枠組み」が整っています。こうした枠組みがあることで、選手は「どこをはみ出したら反則か」「PKはどこからか」といった判断を迷わずに下せます。
もしフィールドの境界線がなかったらどうなるでしょうか?「今のプレーはフィールドの中なのか外なのか」が曖昧になるため、いちいち試合を中断して確認する必要があるでしょう。ゴールポストが設置されていなかったら、「今のは得点かどうか」を議論するだけで時間も心理的リソースも浪費してしまうでしょう。
こうしてみると、サッカーの試合が成立するのは、「目標・役割・ルール・仕組み」という「構造=枠組み」があるからだということがわかります。逆にこれらのどれかひとつが欠けただけでも、選手は無駄に心理的リソースを浪費し、疲れるばかりで、まともなゲームにはならないでしょう。
チームに「構造」がないと、心理的リソースの消耗が止まらない
職場のチームも同じことです。
チームが効率よく機能するためには、「構造」を設定することが不可欠です。
・何を達成すればいいのか(目標)
・誰がどの役割担うのか(役割)
・どんな基準で判断すればよいのか(ルール)
・ルールを成立させるための枠組み(仕組み)
このなかでも、最も重要なのは「目標」です。
たとえば、カスタマーサポート部門であれば、「現在のサービス継続率の80%を、3ヶ月後に95%にしよう」と目標を立てることで、現状との差分が明らかになります。
すると、どのような手立てを講ずれば目標を達成できるのかを考えることができ、そのなかで最もインパクトがありそうな施策を選択することができます。つまり、目標があるからこそ、そこから逆算して「今やるべきこと」を明確にすることができるわけです。
次に重要なのが、「役割」の明確化です。
たとえば、部署の代表メールアドレスに顧客から問い合わせが届いたとします。



