「一人っ子政策」がもたらした悲劇

 周知の通り、中国はかつて史上もっとも厳しい人口抑制政策「一人っ子政策」を36年間にわたり実施した。この36年間で苦しめられた家庭は億単位に上るといわれている。「百日無孩(百日ゼロ出産)」運動や「超生罰則(超過出生に対しての罰金)」「開除公職(職場解雇)」など、厳しい罰則が設定されていた。

注:「百日無孩」とは山東省の一部地域で、1991年の5月1日~8月10日の100日間で、子どもを1人も産ませないという目標を掲げて行われた運動。期間中、妊婦であれば初産も第2子も関係なく、一律に人工中絶が行われた。妊娠後期(7~8カ月)で、出産間近だった女性も免れることができなかったという証言が残っている。

 当時は農村を中心に、「一人っ子政策」を徹底するため、横断幕や塀などに生々しいスローガンが書かれていた。

「たとえ血が川のように流れても、1人たりとも多く産んではいけない(寧可血流成河、不准超生一个)」「10のお墓を増やしても、1人を増やしてはいけない(寧添十座墳,不添一个人)」などである。

 地域によっては、いまだに塀に書かれた文字が残っている。それらの文字の背後には、消えた多くの命と親たちの涙があるのだ。

政策転換後も止まらない人口減少

 2016年初めに「一人っ子政策」は幕を下ろした。反動として、その年に生まれた赤ちゃんの数は1786万人だったが、その後年々下がり続けて今に至る。2016年から2025年まで、10年足らずで、新生児の数は約1786万人から792万人へと、半分以上減ったのである。

 その後、中国政府はさまざまな政策を打ち出して出生率を上げようとしたが、効果は一向に出ていない。毎年の人口研究機関の予測を裏切るように、出生数は大幅に減り続けている。

 背景には、景気の停滞と若者が置かれている社会環境の変化など、さまざまな要因が重なっている。言い換えれば、出生数の減少過程は中国の社会の変化をそのまま物語っているのではないだろうか。