人口問題は、それだけにとどまらない。
中国経済はこれまで莫大な人口と豊富な労働力、巨大な内需市場により高成長を実現してきた。しかし、大幅な人口の減少で、人口「ボーナス」が無くなれば、経済規模の縮小が余儀なくされていく。また、日本と違って、中国の高齢化は豊かになる前に突入したもので、いわば「未富先老」である。年金を払う若者が減れば、急増する高齢者を支え切れなくなり、年金、医療、介護など、様々な社会保障に支障が出るのは目に見えている。こうした一連の連鎖が将来において、中国という「強い」国家像を弱体化させるリスクが潜んでいる。
コンドームに付加価値税、電話で確認「月経警察」
そのため、中国政府にとっては「人口減少」は決して看過できない最も重要かつ深刻な問題である。政府は、結婚や出産時の有給休暇を与えるほか、出産支援策として、3歳未満の乳幼児がいる世帯には、1人につき年間3600元(約7.9万円)の申請を可能とした。コロナ禍の時期でさえ、今まで、国民に現金支給という形の支援がまったくなかった中国としては、異例の措置である。
また、今年1月から、コンドームや避妊薬などに対する32年間の免税措置を撤廃し、13%の付加価値税(VAT)の課税を開始した。そのほか、一部の地域では、地方当局が女性の月経周期や出産計画(妊娠の予定など)について電話で確認するなどの「月経警察」と呼ばれる動きが報じられていて、「プライバシー侵害」と批判されている。
かつての「一人っ子政策」時代に強制的な中絶や避妊が行われていたことから一転、現在は「子供を持つように強制」されている現状に対し、国民の反応は冷ややかで、特に若者の反発が大きい。生育という極めて個人的な選択には、政府がどんな介入をしても、逆効果となるだけである。
「人口増加にはもう戻れない。2025年の出生人口数792万人は、これからの何十年では一番多い出生数となるかもしれない」と考えている人が多い。
“清朝時代と同じ出生数”14億人の大国で起きているこの現実は、政策や経済対策で解決できる段階を超えている。かつて国家に奪われた「産む権利」を、今や若者たち自らの意思で手放している。この静かな抵抗こそが、現代中国が直面する最大の危機なのかもしれない。







