火災の現場からは
毎回思わぬ報告がある

 火災現場の遺体は、まずは火災があったことと、現場から遺体が発見されたことの2つの事実しか明らかではありません。死因の種類(事故、自殺、他殺など)は、火災原因と死因などを踏まえたうえで、捜査を尽くして判断するほかないのです。

 また、火傷や炭化により顔貌がわからないこともあります。出火元の居住者を装った別人が事件に巻き込まれて遺体を燃やされた可能性もありますので、一旦は身元不明扱いになり、身元捜査に入ります。

 解剖後、火災犯捜査係員に連絡して2日間にわたる現場見分の結果を確認すると、室内の焼損状況及び電化製品の配置から、20年以上使用されていた製品が火源として疑われつつも、特定には至らなかったようです。

 経年劣化が想定されるものの、リコール対象製品の可能性も否定できず、製品事故の観点から、当該製品の製造事業者に照会予定とのこと。火災の現場からは毎回思わぬ報告があります。

 とくに冬季は毎日のように火災が続くなか、消防や火災犯捜査係の活動に頭が下がる思いです。火災現場における検視はいつも以上に多くの捜査員による綿密な捜査を必要とし、消防との連携が重要になるのです。

大規模火災が発生した際は
遺体をどこに安置するのか

 火災は個人の住宅だけで起こるものではありません。多くの人々が亡くなる痛ましい大規模火災がたびたび発生しています。

 千日デパートビル火災(1972年、大阪府大阪市、118人死亡)、川治プリンスホテル火災(80年、栃木県塩谷郡藤原町〔現在は日光市〕、45人死亡)、そして、ホテルニュージャパン火災(82年、東京都千代田区、33人死亡)、2000年代に入ってからも、歌舞伎町ビル火災(01年、東京都新宿区、44人死亡)、京都アニメーション放火殺人事件(19年、京都府京都市、36人死亡)などが挙げられます。

 ここでは、ホテルニュージャパン火災を取り上げ、併せて多数遺体を取り扱う事件・事故の検視について紹介します。

 ホテルニュージャパン火災のように30人を超える遺体を、管轄署や捜査本部のある署(この事件では麹町警察署)に全て運び込むことはできません。多数遺体がある事件・事故では遺体安置所の問題が発生します。