火災事故、全身炭化の遺体と向き合う現場の裏側写真はイメージです Photo:PIXTA

住宅火災や大規模火災が発生すると、現場では消火活動と並行して、警察による「検視」と「捜査」が進められる。だが、炎と煙に覆われた火災現場では、事件性の有無や死因の特定が極めて難しくなることも少なくない。焼け落ちた建物、損傷の激しい遺体――限られた手がかりの中で、警察や消防はどのように判断を重ねてきたのか。住宅火災をはじめ、数多くの火災現場の裏側から、検視のリアルに迫る。※本稿は、検視官の山形真紀『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

火災現場では警察と消防が
連携して調査にあたる

 冬になると大気が乾燥しているため、住宅火災が頻繁に起こります。火災の報道が増え、地域によっては消防が火の用心を呼びかけているところもあるかもしれません。火災現場では消防だけでなく、警察も活動しているのだと知っていただければと思います。

 3月中旬のまだまだ寒い季節です。前日の勤務員から、本日未明に住宅火災があり出火元の居住者1人が見つかっていないと引き継ぎを受けました。

 火災は夜間に多く発生します。警察としては、まずは出火元の居住者を救出したり近隣住民の避難誘導や安否確認が最優先です。同時に目撃者や通報者などを探します。

 しかし、全員の安否確認が取れないと、署から警察本部に対し、火災事案の続報として「燃えている家の住民が避難できていない模様です。現在行方がわかりません」などと、検視の予告のような連絡が入ります。その情報が検視調査室にも共有され、翌朝に引き継がれるのです。

 引き継ぎを受け、私は管轄署で火災犯捜査を担当する強行犯係長に連絡を取ってみました。