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人が亡くなったとき、その原因を正確に明らかにする「死因究明制度」は、事件性の有無を見極めるためだけのものではない。感染症対策や事故防止など公衆衛生の向上、ひいては社会の安全を支える重要な基盤でもある。ところが日本では、法医学者や検案体制の不足に加え、制度を一元的に担う行政機関が存在しないなどの構造的課題を抱え、解剖率は全国平均で1割にも満たないのが実情だ。解剖率の低さは何を見えなくしているのか。そして日本の死因究明制度は、なぜ十分に機能してこなかったのか。本稿では、その背景にある3つの構造的問題を検視官の視点からひもといていく。※本稿は、検視官の山形真紀『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
日本で監察医制度が
施行されているのは5都市のみ
人の死に対しては事件性の有無ももちろんですが、公衆衛生の向上を目的に、できるだけ正確に死因を明らかにし、その情報を社会に活かす制度が不可欠です。
しかし、検視官としての経験から、日本の死因究明制度には多くの課題があると感じます。とくに問題なのは、「犯罪死体」や「変死体」として司法解剖されるケースではなく、事件性がないとして、警察によって「その他の死体」と判断されたケースです。
第1の課題として、全国平均で1割にも満たない「その他の死体」の解剖率の低さです。
全国的に法医学者や法医学教室の数が限られており、地域による格差も大きいため、全ての遺体を解剖することは現実的ではありません。
1947年、GHQの指令によりアメリカのメディカル・エグザミナー制度に倣い、全国7都市(東京都の区の存する地域、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市)に監察医務院が置かれましたが、現在もこの監察医制度が施行されているのは5都市(東京23区、大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市)のみです。







