2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
嫌いなヤツは人間だと思わなければいい?
商業ビルのエレベーター内で、「職場の愚痴」を言っている人がいた。
「あいつ、本当に何様なの? って感じ。いまは言うこと聞いてるフリしてるけど、何も言わずにやめてやるんだからね。私がいなくなって、せいぜい困ればいいわ」
まったく知らない人だが、人目もはばからず友人に話している様子を見ると相当ご立腹だ。
「まぁ、やめることはないんじゃない? そいつのことを人間だと思わなければいいんだよ」
相手はそう言ってなだめようとしていた。
職場にいる「嫌いなヤツ」を、人間だと思わなければいいというアドバイス。
私もかつて、職場でキレて大泣きしている同僚にそう言ってみたことがある。同僚は「嫌いなヤツ」に嫌味を言われたと言って、泣くほど怒っているのだった。
怒りをおさめたくて言ってみたのだが無駄だった。「人間じゃなかったら何なんだよ!? 何だったらガマンできるっつーんだよ!?」とさらにキレちらかしたのだ(ちなみに女性)。
まぁ実際、我ながらひどいというか、ずいぶんなアドバイスである。
相手を嫌いになる前に、できることがある
職場に、どうにも嫌いな人がいるというのは苦痛だ。
こうなる前に、何かできることはあったのだろうか。
組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏は、「職場の人を好きになれないんですけど、どうすればいいですか」とよく聞かれるという。
『組織の違和感』(ダイヤモンド社)の中で、こう述べている。
好き嫌いや仲が良いかどうかは業務と離れたものだと思われていますが、信頼感が職場の生産性に寄与しないわけがありません。違和感を放置した結果、信じられない、もとい、嫌いにまでなっている。
――『組織の違和感』p.247より
つまり、「相手を信じられない」というのが問題なのだ。
「今の反応、変だったな」
「どうしてそんな言い方をするんだろう?」
そういった違和感をスルーして、「あの人はこういう人だから」と決めつけるようになり、信頼できなくなっている。
「さっきの発言の意図がちょっとわからなくて戸惑っているのですが……」
などと違和感を話し合うことができれば、相手を「好き」とまではいかなくても、信頼できるようになるだろう。
「合わない」と切り捨てる前に
人にはそれぞれ「持ち味」があり、相性がある。「あの人、ちょっと合わないな」とか「何を考えているかよくわからないな」ということはあるものだ。
しかし、「合わない」と切り捨ててしまえば、良い職場にはならないし、「嫌いな人と毎日顔を合わせなければならない」と苦しむことになる。嫌いな人がいるからと、毎回退職していては身が持たない。
勅使川原氏も「たったひとりの嫌な人のために自分のキャリアを棒に振るなんて、そんなことはしなくていい。困ったらいったん、違和感の原点に立ち返りましょう」と言っている。
逆にいえば「ちょっと合わないな」という人とも、同じ目的に向かって一緒に働くことができるのが組織の良さだ。だからこそ、一人ではできないことができる。独創的な事業や商品、サービスも生まれるというものである。
本書には、組織の違和感を起点にして良い職場を作る方法が書かれている。職場の人を好きになれないという人にもおすすめしたい一冊だ。
(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)
小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太