これでは、いくら働いても富裕層との差は縮まらない。

 しかし、ここには話のすり替えがある。富裕層が稼げたのは、労働より投資をがんばったからではなく、1億円の資産を最初から持っていたからだ。

 ピケティが伝えたかったのは、「最初から資産がある人がさらに豊かになる」社会構造に問題があるということであって、「資産のない人も、投資をがんばれ」という話ではない。

投資で結果を出すのは
年収を上げるより難しい

 もう1つ重要なのは、「努力が報われるかどうか」という視点だ。

 自分が汗水流して働いている横で、知り合いから「投資で100万円儲けた」と聞けば焦ってしまう。さらに「r>g」というもっともらしい説明を聞くと、「投資の勉強をがんばったほうがいいのでは?」と思ってしまう。

 投資は、プロでさえ成果を出すのは難しく、努力が報われる保証はない。投資に関する名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』には、「プロが選んだ株も猿が選んだ株も成績はほぼ同じ」という逸話まである。

 実際、資産家の多くは投資をしているが、投資の勉強を特別がんばっているという話はあまり聞かない。

 一方、労働収入の平均の伸び率とされる1~2%は低く感じるが、この数字は平均でしかない。重要なのは努力が報われるかどうかだ。

 知識やスキルを高め、資格を取得し、経験を積めば、労働収入を平均の伸び率以上に増やすことができる。努力が報われやすいのは、明らかに労働の方だ。

 だからこそ、「投資は労働より有利」という安易な言葉に惑わされてはいけない。有利なのは、資産がある人であって、投資という手段そのものではない。

 そして、努力が報われやすいという意味で有利なのは、投資よりも労働だ。特に若いうちの努力ほど、その効果は大きい。

 だから、こう伝えた。

「バイトや投資の勉強も意味があるけど、『働いて稼ぐ力』を育てる方が、長い目で見るとずっと効率的ですよ」と。