海外の人には割安に映り、売れ行きが伸びる。日本企業は潤い、給料も上がった。円安はたしかに追い風だった。
でも、それはもう過去の話だ。
今の日本には、世界に誇れる商品が少なくなっている。円安でも日本製品は売れない。それどころか、家電や機械、さらには魚介類など、かつて輸出していたものを今では輸入に頼っている。特に、音楽配信やクラウドサービスなどデジタル分野ではアメリカへの依存が進んでいる。
外国に売れる物が減り、外国から買う物ばかり増えた。当然、円安が進み、物価も上がった。
私たちの暮らしは、確実に追い詰められている。だから「責任者、出てこい」と叫びたくもなるのだ。
一般的には、物価上昇に給料が追いつかない理由として、円安や原材料の高騰が挙げられる。
『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』(田内 学、朝日新聞出版)
しかし掘り下げると、その根本には「人手不足」という現実が見えてきた。私たちが必要なモノを作る力が減り、世界が欲しがるモノを生む力も弱まっているのだ。
リクルートワークス研究所の報告書でも、「先端分野への人材供給が後回しになり、経済活動が一層停滞する」と警鐘が鳴らされている。
このままでは、日本が新しい価値を生み出す力は衰える。円安も止まらず、物価はさらに上がっていくだろう(注1)。
円安の本質はお金自体の問題ではない。
それは「人手不足という構造的な危機」そのものなのだ。
(注1)貿易・サービス収支の赤字が拡大傾向にあり、円安圧力になっている。一方、海外投資からの収益を表す所得収支の黒字の方が大きいが、こちらは外貨のまま保有されることが多く、円高圧力になりにくい。







