内田:先生がそこまで強く主張されているから、いつの間にかかなり広がってるかもしれないです。実際に二拠点生活を始める若い人が増えてきましたから。田舎に自分の家をもう一軒確保しておく。都市で何かあっても、そこに行けば雨露がしのげて、飲み水があって、畑では野菜が採れて……短期間なら自給自足できる。そういう家を「アジール(逃れの場所)」として確保しておくというのは、リスクヘッジとして合理的だと思います。
養老:最初は都会に集中しすぎるから、という理由で行っていたんですけど。今になってみると、災害の時に。
人が住めるところは
日本列島のどこにでもある
内田:そこに行きさえすれば「自分の家がある」ということだと安心ですよね。先ほど田舎に住みたいシティボーイ、シティガールがいると言いましたが、凱風館(編集部注/内田樹が主宰する合気道の道場兼哲学の学び舎)の門人にも何人もいます。しばらく前に、門人のご夫妻が京丹後の限界集落で二拠点生活を始めたんです。
そこに凱風館の仲間たちが週末になると行って泊まって、畑仕事を手伝ったり、屋根のペンキを塗ったり、床の張り替えやクロス貼りを手伝って、「山の家」というのができた。そこが凱風館門人たちにとっての「みんなの家」になっています。
素晴らしいアイディアだなと思って、そのご夫妻に「欲しいものがあったら言って、プレゼントするから」と提案しました。エアコンはどうかと言ったら、「エアコンはいいです。それよりユンボを買ってください」と言われた(笑)。小さなユンボをプレゼントしました。
でも、そうやってみんながお金を出したり労力を出したりして、京丹後の山の中にささやかな「公共空間」が出来上がった。もし、何かあったら、門人たちはこの拠点に逃げ込むことができる。もともと集落の公民館だった建物なので、かなりの人数でも二拠点生活ができそうです。
養老:この間、虫取りで、山梨の甲府市内にある山奥に行ったんです。市内なんだけど、限界を超えた集落で人が誰も住んでいない。家は全部空き家。そこに甲府市が持っている建物が1つあって、そこの管理人のおじさんだけがいて、ここいいなと思った。
確かあの日は、気温が二十数度。東京はおそらく三十数度でした。10度以上気温が低くて涼しいから過ごしやすいです。







