2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経つ。南海トラフ地震や首都直下地震など巨大地震の脅威も去らぬ中、断片的な防災知識ではなく最先端の科学技術や専門家の知見に基づいた正しい防災知識を身につけたいと考える人も多いのではないだろうか。
本記事では、池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第2章「自然・災害からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に「アップデートすべき防災知識」を聞いた。
家で過ごす時間が増える年始、防災対策を見直してみては?(取材・構成/杉本透子)
「応急手当て用品」をちゃんと揃えていますか?
――防災グッズのマストアイテムとして、前回の記事では「ポータブル電源」を挙げていただきました。次点で必要なモノはなんでしょうか?
国崎信江氏(以下、国崎):大きな地震が起きると多くの人がケガをすることになります。生きるためには「応急手当て用品」が絶対に必要なのですが、用意していない人が多くて心配でなりません。もし床に散ったガラス片を踏んで、足の裏が血だらけになっても歩けるでしょうか? 痛すぎて動くこともできないはずです。多くの方は自分がケガをするとは思っていなくて、水や食料のことを気にしがちですよね。
――そうかもしれません。「まず水だ」って思いがちですよね。
出血で動けなくなることを想定する
国崎:応急手当て用品というと絆創膏をイメージする方も多いのですが、準備していただきたいのは絆創膏をつけるような傷ではなく生命の危機に関わる傷や迅速に手当てしないと悪化する傷です。失血死にならないよう出血した部位を止血する包帯、ガーゼ、骨折の際に使用する「(腕をつるのに使う)三角巾」などは少なくとも用意しておきましょう。私は応急手当の指導員ですがそれでも家族に対しては慌ててしまうことを予測し簡単に止血できる「止血パッド」や「空気で膨らむギブス(エアーギブス)」なども用意しています
――私たちが想定しているより、重症なケガが多いんですね……!
国崎:親としても、もし子どもがケガをして血だらけになってしまったら、止血できるものを用意しておけばよかったと思うはずです。災害時はなかなか病院にもいけませんし、開いている病院にも人が集中して措置が遅れたりということもあります。私は親としても、自分自身のためにも、出血によって亡くなってしまうことを防ぐために、止血パッドと滅菌パッドを必ずバッグに入れて持ち歩いています。
滅菌パッドは100円ショップで買えるもので、包帯不要で傷口を守れるので、止血パッドによって出血が収まったあとに保護するアイテムとしておすすめです。
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持ち歩くことで、リスクを減らせる
――ふだんから持ち歩いていらっしゃるのですね。
国崎:私はむしろこれらを持っていないと怖くて外に出られないですね。大地震が発生するとビルからタイル片やガラス片が無数に降ってきて、体に突き刺さることがあります。自分はケガしないと思わず、出血することを想定して備えておくことが大事です。
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』についての書き下ろしインタビュー記事です。
国崎信江(くにざき・のぶえ)
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。