「まったく間違っています。駅前など多くの人が行き交う場所に、喫煙所などをつくってしまえば、喫煙者がこのあたりで吸っていいのか、と勘違いをして路上喫煙やポイ捨てが増えていくだけですよ」
そう断言するのは、元千葉市議会議員の茂手木直忠氏だ。「医療法人社団 直心会 轟クリニック」(千葉市)の院長として長年、地域医療に携わりながら市議を8期務めた茂手木氏は、国に先駆けて制定された千葉市受動喫煙防止条例においても中心的な役割を果たした人物だ。
このような議論になると、受動喫煙の被害があるにしても、喫煙者側も合法の嗜好品であるタバコを買って税金を払っているのだから、社会コスト的にはトントンだという意見も出てくるだろう。
JTも公式サイトで「社会経済の視点から見ると、たばこは耕作者から販売店にいたる幅広い産業の担い手により支えられている製品であり、世界中の多くの人々の生計の糧となっています。たばこを吸われる方々が負担しているたばこ税は世界各国の財源に大きく貢献しているということも忘れてはならない事実です」と主張している。
しかし、茂手木氏はそれも大きな誤解があるという。
「タバコに税収があったとしても、実際にはその何倍もの医療費がかかっています。喫煙者は自分はもちろんのこと、周囲の非喫煙者に健康被害を広めている側面があり、その医療コストはタバコ税収どころの騒ぎではありません」(茂手木氏)
茂木氏は今年80歳。水泳やフルマラソンを長く続け、70歳まで100キロマラソンに挑戦していた猛者だ。健康の秘訣を聞くと、こう断言した。
「まず歩くこと。今でも診療の間などで1日3万歩は歩いています。あとそれよりも大きいのはやっぱりタバコを吸わないことですよ」
高市政権で積極財政と減税の機運が高まっているが、138兆円と日本のGDPの22%にまで膨張した社会保障についてはほとんど真剣に触れられない。
自治体とタバコ会社が連携しながら喫煙所を増やすことで「分煙環境」を進めていくことは、非喫煙者にとっても悪い話ではない。
しかし、それは裏を返せば「喫煙環境」を整えるということでもあるので、受動喫煙被害は増やすことになり、医療従事者や嫌煙家の皆さんにとって望ましくない。医療経済的にも課題は残る。
果たして喫煙所の整備で「吸う人も、吸わない人も心地のいい社会」は実現できるのか。注目したい。








