2040年代の需要増を
見据えた複々線化
一方、成田空港付近の複線化は前回記事でも触れたように、既に非公式で検討が進んでいる。運輸総合研究所が2022年に公表した「成田空港の鉄道アクセス改善に関する調査研究」は、設計・用地買収を含む各種手続き完了後の工期を5年と想定。概算工事費は700億~1100億円としており、京成が昨年5月21日に発表した中期経営計画「D2プラン」もこの試算を引用している。
スカイライナー・新型有料特急の増発には同区間の複線化が不可欠で、複々線化の前提でもある。政府は2030年にインバウンド6000万人受け入れを目標に掲げており、首都圏空港のさらなる需要は成田空港で受け入れる方針だ。
成田空港はB滑走路延伸とC滑走路新設工事を進めており、2028年度末に供用開始予定だ。また、3つに分かれている旅客ターミナルビルを、2030年代半ばに移設、集約する構想があり、空港駅の移設も予定されている。まずは今後10年で複線化と駅移設を段階的に進める形になるだろう。
京成はプレスリリースで「わが国の国際競争力向上等に必要な国家プロジェクトと位置付けられている成田空港の機能強化に対応し、将来にわたる訪日外国人の増加等、中長期的な需要増加に的確に対応するため、成田スカイアクセスの抜本的な輸送力増強およびサービス向上策について検討しております」としており、あくまで複々線化は「中長期的な需要増加」に対応するという位置づけのようだ。
2025年の訪日外国人旅行者数は過去最多の約4268万人を記録したが、これはコロナ前(2019年)から約971万人増加している。地域別にみると、東アジアが23%増の約2114万人、東南アジアが25%増の約480万人だった。
出入国管理統計(2025年11月)から地域別入国空港を見ると、東アジアは中国・韓国を中心に関西が29%で最多だが、首都圏では成田が21%、羽田が8%となっており、LCCが多く発着する成田の存在感が大きい。一方、成長余地の大きい東南アジアは成田が37%、羽田が16%、関西が28%で、成田が最多である。
国土交通省は2042年度の成田アクセスの鉄道利用者数を対2023年度で1.8倍、スカイライナー、アクセス特急の利用者は倍増すると試算している。空港付近が複線化すれば輸送力は大幅に向上するが、スカイライナー・新型有料特急は全席指定席であり、綱渡りの需給調整は避けたいところだ。複々線化は2040年代を見据えた取り組みになるだろう。
京成が1月30日に発表した第3四半期決算によれば、成田空港発着の輸送人員は2173万人で、2018年度同期の1613万人から500万人以上増加している。同じく2018年度に約151億円だった空港発着の運輸収入は241億円となった。全輸送人員に占める成田輸送の割合は7%に過ぎないが、全運輸収入に占める割合は36%だ。
過去、経営危機に陥った経験から堅実経営で知られる京成だが、近年は投資ファンドから成長投資、株主還元の圧力を受けている。複々線化構想は成田アクセスを抜本的に強化し、経営を飛躍させる切り札になるか、それとも投資ファンドを意識した大風呂敷で終わるのか、成田アクセスは2040年代に向けて、一気に動き始めた。







